高校・塾・予備校の授業の予習と復習(3) 復習

さて,復習のしかたのはなしです。予習をしている場合としていない場合では,復習の仕方も変わってきます。授業をきちんと聞いた場合と,ぼーっとしていた場合とでももちろん違ってきます。まあ,予習はたいしてできなかったが,授業はちゃんと聞いていたと仮定して話を進めてみることにします。

 

文法の復習はどうやるか

学校や塾・予備校の授業で扱った文法問題の復習は基本的には解きなおしが中心になります。予習の項で,

  1. その問題のポイントは知っているし,答えにも自信がある
  2. 出題されているポイントはうろ覚えだったり,自信がないが,たぶんこれが答えかな
  3. まったく手も足も出ない

という分類をするといいと書きましたが,予習なり,授業の時点でこれができていれば,自分にとっての要注意問題( 上の2や3 )が絞り込めます。授業が終わってからできるだけ早い時点で(できればその日のうちに),一度全部の問題を再チェックして,1 のタイプの問題を本当にもう復習の必要はないかをチェックして,残りの問題を少し時間をあけて(2,3日後や1週間後)解きなおしてみましょう。直後・1週間以内・1ヶ月後くらいの3回ぐらいは必要です。その3回で徐々にタイプ3だったものがタイプ2に,タイプ2だったものが1へと変わっていくはずです。そうやってさらに絞り込んだ問題が徹底復習の対象で,何度やってもタイプ1にならなかった問題だけを,ノートやカードに書きだしてみるのもいいでしょう。

ただ,問題はたいてい記号選択式になっているため,答えを覚えてしまうことも多く,「そういう場合,復習はどうやったらいいのですか?」という質問も数多く寄せられます。答えるのはむずかしいのですが,次のようなことも考慮に入れてみてください。

  • 正解が出せるかどうかだけでなく,なぜそれ以外が不正解なのかも言えるようにする(理解しているかしていないかのハードルを上げる)
    -→ これは,答えを覚えていてもいなくても留意してほしいポイントです。答えの根拠をはっきりさせることです。それがなぜ答えなのか友人や弟妹に質問されたと仮定して,どう答えるか考えてみるといいでしょう。問題は無限にありますが,文法のポイントは有限です。そのポイントをしっかり深く理解することが大切です。
  • もしその問題の解答に日本語訳がついているなら,その日本語訳だけを見て英語に直せるようにする(問題形式を変えてしまう)
    -→ 「そんなムチャな」と思うかもしれませんが,はじめに答えを代入した英文を5, 6 回音読し,その後で英文を見ずに,日本語訳から正確な英文を組み立てるといいでしょう。それほどむずかしくはありません。
  • 3 回程度復習が終わったら,別の問題集の同じ単元をやる(類題演習)
    -→ 文法単元別に章が分かれている問題集を探すのが少し面倒ですが,いろいろな問題に当たるという点ではいいと思います。もちろんたくさん問題をやればいいというわけではなく,あらたにやったこれらの問題も復習すべきでしょう。
  • 3 回程度復習が終わったら,1月以上の間をあける(案外忘れている)
    -→ 英語が苦手な人にとってはこれがいちばん現実的かもしれません。

文法事項の復習の時にあらたな疑問点が生じることがあります。最初にやった時にはわかっていたつもりなのに,深く考えなおしてみると かえって疑問が湧く,これはとてもだいじなことであなたが進歩した証拠でもあります。

こういう場合は,先生に質問に行くのもいいですが,あらかじめ調べられることは自分で調べておくことをお勧めします。辞書にはかなり多くの情報が出ていますし,文法の参考書を使うのもいいでしょう。その意味でも,分厚い文法参考書を一冊持っておくと便利です。1ページめから読む必要などありません。目次と索引を使って,辞書のように参考書を引いてください。

 

読解の復習はどうやるか

長文の復習は,英語の勉強の中でいちばん時間をかけてじっくり,しかも何回も行うべきでしょう。予習の項で述べましたが,長文の予習はもともとある程度の実力がないと手がつけられませんが,予習ができなくても,復習をしっかりやりさえすればかなりのレベルまでは実力をつけることが可能です。復習だけで最難関校まで対応できるというわけではありませんが。

復習の最終目標は,その長文がスラスラ読めて意味がすんなり頭に入って来るようにすることです。内容的にも英語的にもかなり難解な長文もありますから,現実にはなかなか「スラスラ」「すんなり」とはいきませんが,あくまでも最終目標はそこに置いてほしいと思います。なお,予習や授業の時点でテキストには書き込みがしてあるでしょうが,復習で何度も読み直す場合はそれとは別に書き込みのしていないテキストが必要です。塾・予備校のテキストにはその目的のために復習用長文のページが用意してあるものもありますが,そうでない場合はコピーなどをとって,書き込みはコピーにした方がいいでしょう。

やさしめの長文でも,「スラスラ」「すんなり」の段階に至るには一気にたどりつけません。いくつかの復習のステップをたどりながら徐々にレベルアップしていってください。

  1. まず,授業のノート・和訳などを参考にしながら,一文一文をていねいに読み直す

この時点では,もう一度 S, V, O, などの要素や,修飾関係,句や節の範囲などの文法的な構造をしっかり把握しなおしてください。

テキストは基本的に精読用に作られています。精読 (intensive reading )とは,文の構造や単語一つ一つをしっかり理解しながら,正確に文を読み取っていくことです。精読に対して,多読 (extensive reading )・速読は,精読でつちかった読解力を使ってたくさんの英文を早く読み,読む経験を広げることです。精読は文法的正確さ重視,多読は内容重視で読んでいくことになります。実際にはどちらも必要なことなのですが,正確さを踏まえない多読は,テキトーな読み方になってしまい,それだけでは少なくとも大学受験には向きません(多読するほど時間的に余裕がありませんし,入試長文で下線部になってるのはたいていクソ難しい部分で,文法的に正確な読解をしないと正解にはたどり着けません)。

復習のこの段階では,一文ずつ読みながら,頭の中で訳していくことになりますが,解答の和訳と完全に同じである必要はありません。でも,だいたい同じだからいいや,と思っているとマズイ場合もあります。自分の和訳があってるのかあってないのかの判定はかなり微妙なので,心配なら先生に質問した方がいいでしょう。慣れてくれば,自分でも判断できるようになります。

テキストが入試問題である場合には設問がついていますが,その問題についてもこの段階ではなぜそれが正解なのかをしっかり理解するようにしてください。内容真偽問題は,本文のどの部分にそれが書いてある(または本文と異なる)のかをチェックします。記述問題なら解答のまとめ方も,もう一度考えてみるといいでしょう。

  2. 本文を,意味を考えながら,ゆっくり音読する

この段階以降では,やることは単純です。もう設問のことは忘れてかまいません。ひたすら英文を繰り返し読むだけです。

音読が重要だということについては,おそらく10人の先生が10人とも意見が一致しています。でも実際にこれをやっている生徒は意外に少ないのではないでしょうか。周りに人がいる自習室・図書館などではやれないし,うちでもちょっと...という人は多いでしょうが,何とか工夫してやってみてください。

音読は,ただ機械的に声を出すだけではなく,意味を考えながら読んでいきましょう。難しい部分は当然ゆっくりゆっくり読んでかまいません。わからない文は読み直してもかまいません。文字と音と意味があなたの頭の中で結びついていく,そうやって英語があなたの頭を駆け抜けていく,そういう時間,そういう経験を持つこと自体が大切なのです。

 

  3. これを何回も繰り返し,読むスピードも少しずつ上げていく

くりかえし音読,という勉強法は即効性ではありません。つまり,今日やれば明日には実力アップとはいきません。1月つづけると,少し力がついたような,つかないような感じになり,2月続けるとやっぱりついたかなという気がして...という具合に,効果はふつう少しずつしか現れません。でも数カ月たてばその違いが歴然と見えてくるでしょう。

何回復習するかについては,その長文の難しさによります。先生によっても,3回やれという先生から 10 回やりなさいという先生までいます。目標は最初に述べた「スラスラ読めて意味がすんなり頭に入って来るようにすること」ですから,これができるまで繰り返したいところです。

1つの長文で復習が完成するまで次の長文に進まない,という意味ではありませんよ。毎週のように授業では新しい長文が取り上げられます。そのそれぞれについて上の 1 ~ 3 をこなしていきながら,新しい長文の復習もその途中に割り込んで入ってきます。たとえば,月曜に授業があったとして,火曜に復習1回目,木曜は前の週の復習2回目,土曜はその前の週とさらにその前の週の2週分の復習という具合に進めていきます。いつどの復習の何回目をやるかをきちんと決めて,自分の復習ペースを作っていかないと,復習すべきことだけ溜まってしまい,しまいにはやる気をなくしてしまいます。すくなくとも上の 1 は授業から2, 3日以内にやってください。逆に 3 は時間が空いたとき,寝る前などにチョコッとやるのでもかまいません。

毎週授業で新しい長文をやっているなら,一年で30個ていどの長文に触れることになります。これを上記のようなやり方で復習を繰り返し,モノにすればかなりの実力になっているはずです。スミからスミまで完璧に理解し,繰り返してスラスラ読めるようになった長文が30あれば,すごいことです。現実には,高校・塾(平常授業+講習)・模試,さらに押し詰まってきたら赤本など,さらに多くの長文に触れることになります。量的にはこれらをきちんとこなしていれば,ほとんどの大学に対応できるはずです。同じ長文をそんなに何度もやって力はつくのか?と疑問を感じる人もいますが,やさしい長文だけをやっているのでなければだいじょうぶです。

 

英作文の復習はどうやるか

英作文は一般的に予習の段階で自分で英文を作り,それを授業で確認するなり,先生に添削してもらうなりして勉強する,つまりあまり復習には重点を置かない勉強法が一般的でした。英語を書くことが苦にならない生徒ならそのやり方でかまいません。自分が予習で書いた英文の間違い個所や修正すべき個所をチェックすれば復習は完了です。

しかし,いくらか間違いはあるにしても構造は崩れていない,というレベルの英文が書けない生徒にとっては,この勉強法は無理だし,それ以上のレベルの生徒の場合でも,このやり方だといまひとつ伸び悩む生徒が多いというのが私の印象です。

英語を書くためには,使える英文パターンのストックを増やしていくしかありません。そして,そのためには自分で創意工夫して英文を作り上げるよりは,代表的な英文を覚えてしまう方が近道でしょう。でも,「英文を覚える」と言うと,「単語だってなかなか覚えられないのに,ムリ」と思うかもしれません。でも実際にはそんなに難しいことではありません。

英作文の復習の目標は「模範解答を自力で復元できるようにする」ということです。

  1. まず問題文の日本語をよく読んでしっかり意味を理解します。これはあたりまえのことだけど,結構だいじです。日本語を読み間違える人は意外なほどたくさんいます。
  2. 次に,頭の中でどう組み立てるかをもう一度考えてみる。「どう組み立てるか」とは,S + V をどのように選ぶかからスタートして,全体の構造を考えることです。S を決めてから V を考える場合もあれば,V を決めてから S を選ぶ場合もあります。つまり, S + V はセットで考えるといいですが,まあこの辺はかなり英作文に慣れていないと難しいですね。ここでは,一応授業でやったということを前提にしていますが,そうでなくてもこの 1 と 2 は英作文に取り組む第一歩になります。
  3. ここでいきなり,模範解答を見ます。そして模範解答をしっかり理解してください。文構造を確認し,必要なら単語を辞書で引くことも面倒がらずに。そして日本語と照らし合わせて,「なるほど,こういうふうに書けばいいのか」というのをじっくり味わってください。
  4. 模範解答を音読します。5 回~10 回くらい読んで,なんとなく覚えちゃったかなぐらいのところまででかまいません。
  5. 模範解答を隠して,問題文の日本語を英語に直します。なにも見ないで暗唱する必要はありません。日本語を見ながら復元できればいいのです。完ぺきに復元できればOKですが,できなければ 4 に戻ります。
  6. 実際にやってみると最初読んだときには疑問に思わなかった「なんでここは a じゃなくて the なんだろう」とか様々な疑問がわいてくるかもしれません。こういう疑問がすごくだいじなんですね。それを調べたり,質問したりしてみてください。
  7. 1週間後とか1か月後に,もう一度やってみると,当然忘れていますからすぐにはできないかもしれませんが,また 4 からやり直せばいいだけの話です。これを繰り返せば,暗唱はできなくても,英文のリズムのようなものが体に染みついてきます。それが最終目標です。

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