「経験というやつは,教師としては最悪だ。授業をする前にテストをする」(バーノン・ロー)
バーノン・ローは,1950年代~60年代にかけてアメリカ大リーグで活躍した投手。
test は「試練」, lesson は「教訓」という意味にもなる。そちらで読めば,あまりにも当たり前に「試練の後に教訓を得る」ということ。
なお,英語版ウィキペディアでは,このことばは,"Experience is a hard teacher because she gives the test first, the lesson afterwards." となっている。趣旨は同じ。
もちろん何の準備も心構えもできていないからこそ,事件は体験となり衝撃となるのでしょう。試練があるからこそ教訓を得られるわけで,先に教訓を教わっていたら,試練は試練ではなく,ただのできごとになります。
Experience is not what happens to a man. It is what a man does with what happens to him. 「経験とは人に起きることを言うのではない。人に起きることにどう対処するかを言う。」
こちらは,オルダス・ハクスリー(Aldous Huxley)のことば。できごとそれ自体は経験ではない。できごとにどう抗(あらが)い,どのようなlessonをひきだせるのか,そこに出来事を「経験」に変えられるのかどうかが,かかっているようです。ハクスリーは, Experience teaches only the teachable. 「経験が教育できるのは,教育可能な者だけである」とも言っています。数多くの出来事に遭遇してもあまり賢明ではない人もいます。
逆に,教訓だけでも「経験」とは呼べないでしょう。lesson だけ受けて test にさらされないと,lesson はただの厚みのないことばになってしまいます。テストをいっぱい受けろってことではありませんが。