第1回で触れたように,出典を明示する大学が増えてきたとはいえ,まだ3割に満たない少数派で,出題の意図から考えて明示するのが不適切な場合もある。著作権料を払っているのかどうか,よくわからないが,そのへんの問題で出典を隠す場合もあるかもしれない。
早稲田は,国際教養,法が比較的公表する方で,後は政経,理工がぼちぼち。慶應は文学部以外は公表非公表の基準が不明,上智は昔から公表する方だろう。
東大や京大はほぼ一貫して明示しない方針でやってきた(東大後期は出典を載せることもある)。どういう意図かはわからないが,東大の要約問題ではタイトルがヒントになりうるので,出典明示が一般的になったとしても載せない方がいいだろう。
明示していなくても,現在ではネットで出典を発見することも可能になってきた。英米の新聞社・雑誌社は自社の記事をかなり大胆に無料公開している(そうでないところもあるが)し,なにより Google Book Search (グーグル・ブック検索)の存在が大きい。
どの程度発見できるか,2000年から最新の2009年までの東大の入試問題を探してみることにする。
対象は,1番の 1 の要約問題で使われる英文と,最後の5番で使われる英文とする。
● 2009年度
○ <1 の 1 > 要約問題
タイトル: Seeing
著者: Annie Dillard
== 書籍のプレビュー ==
○ <5> 長文総合問題
珍しく,新聞からの出題。
タイトル:
Looking for the Lie (New York Times Magazine February 5, 2006)
著者: ROBIN MARANTZ HENIG
● 2008年度
○ <1 の 1 > 要約問題
このエッセイからは,別の箇所が早稲田・政経,中央・法でも出題されている。
タイトル: About Face
著者: Joseph Epstein
○ <5> 長文総合問題 不明
● 2007年度
○ <1 の 1 > 要約問題 不明
○ <5> 長文総合問題 不明
● 2006年度
○ <1 の 1 > 要約問題
タイトル: Voice and equality
著者: Sidney Verba, Kay Lehman Schlozman, Henry E. Brady
== 書籍のプレビュー ==
○ <5> 長文総合問題
記号学の大家,「薔薇の名前」の著者。
タイトル: How to Travel with a Salmon & Other Essays の中の "How to React to Familiar Faces" の章
著者: Umberto Eco
● 2005年度
○ <1 の 1 > 要約問題 不明
○ <5> 長文総合問題
タイトル: "The Lighthouse," The New Yorker, January 20, 1968
著者: Arturo Vivante
● 2004年度
○ <1 の 1 > 要約問題
タイトル: Searching for memory
著者: Daniel L. Schacter
○ <5> 長文総合問題
タイトル: The Shadow Lines
著者: Amitav Ghosh
== 書籍のプレビュー ==
● 2003年度
○ <1 の 1 > 要約問題
タイトル: Grooming, Gossip, and the Evolution of Language
著者: Robin Dunbar
== 書籍のプレビュー ==
○ <5> 長文総合問題
タイトル: Neither East Nor West
著者: Christiane Bird
● 2002年度
この年はどちらも有名な本。
○ <1 の 1 > 要約問題
A Lateral View
著者: Donald Richie
○ <5> 長文総合問題
タイトル: How the Mind Works
著者: Steven Pinker
● 2001年度
○ <1 の 1 > 要約問題 不明
○ <5> 長文総合問題
タイトル: The darkness of Wallis Simpson and other stories
著者: Rose Tremain
● 2000年度
○ <1 の 1 > 要約問題
タイトル: Beyond Modularity
著者: Annette Karmiloff-Smith
== 書籍のプレビュー ==
○ <5> 長文総合問題 不明
トータルで,判明率70%。