大学入試で使われる英文の出典が明記されていても,筆者名やタイトルだけという場合もあって,その先を特定するのは面倒です。特に最近は,新聞・雑誌はネット上にも同じものがあったりするので分類しにくいのですが,一応以下のようになります。(以下のデータはすべて2008年度入試)
本 (推定) | 234 |
新聞 | 65 |
雑誌 | 70 |
その他のメディア | 18 |
2008年度(昨年度)の入試英文のうち,長文で出典が表示されているのが408題(26.7%)ですが,重複分を除いた実数では397題で,書籍を元にしていると思われるのが全体の60%,ネットなどのメディアが5%,残りが新聞・雑誌で,この二つはほぼ同じくらいの比率になります。
やはり書籍が多いのですが,本については次回に回すことにして,今回は新聞・雑誌を見てみます。
おもな新聞 (数字は,出題数)
International Herald Tribune | 4 |
The Daily Yomiuri (Web版を含む) | 16 |
The Guardian (Weeklyを含む) | 3 |
The Japan Times | 10 |
The Japan Times Weekly | 4 |
The New York Times | 6 |
The Times (Sunday版・Web版を含む) | 5 |
USA Today | 2 |
週刊ST (Web版を含む) | 7 |
新聞でいちばん多いのが, The Daily Yomiuri (16) ,それにつづくのが The Japan Times (Weeklyを含めると14),次いで 週刊ST で,やはり日本の英字新聞が上位に来ています。大学入試の長文では原文を一部書き換えることが当たり前のように行われています。英米メディアの記事を出題する場合,原文と照らし合わせてみるとズタズタになっていることも少なくありません。日本で発行された,日本について日本人が書いた英字新聞ならば,書き換え箇所が少なくてすむのかもしれません。
出題された記事の発行月を見てみると,いちばん遅くても10月です。大学入試は11月前にはだいたいできあがっている,と推測できます。使われているのは,前年の3月~8月の記事が中心,ということになるでしょう。このグラフに載せてないのは,月日まで公開していないデータです。2006年の記事とだけ書いてあるものが2題,2007年が4題あります。
おもな雑誌 (数字は,出題数)
Newsweek (Web版を含む) | 10 |
Reader’s Digest | 3 |
Scientific American: Mind (Web版を含む) | 3 |
The Economist | 4 |
The New Yorker | 2 |
Time (Web版を含む) | 14 |
雑誌は Time と Newsweek が飛び抜けています。まあ,誰もが予想することですから,意外性はありません。出題されている雑誌も,左にあげたもの以外多岐にわたっていて,新聞よりもばらつきが大きくなっていますが,これも当然と言えるでしょう。
発行月も新聞よりばらついています。新聞と同様,前年の3月の数ヶ月がピーク(雑誌の実際の発行日は,たとえば10月号は9月に出るといったように早くなる)ですが,それ以前のものもけっこう多いようです。出題者がふつうに雑誌を読んでいて,「あっ,これ使えるな」と思ってストックしておいたものでしょう。それに対し,前年3月以降の記事は出題委員になってから問題に使える記事を探したものなのかもしれません。
その他 (数字は,出題数)
BBC News | 4 |
VOA (Special Englishを含む) | 4 |
「その他」のものとしてはネットが多いのが特徴で,左のBBC とVOAはいずれも英米の放送局ですが,どちらも英語学習者用の,単語の難易度を比較的押さえたニュース記事を配信するページも持っています。
ネット記事からの出題は今後も増えていくでしょう。すでに英語版Wikipediaからの出題もあります。