昨日の記事のつづきです。
元になっているデータは以下のとおり。
昨日は,パーソナルな話題をテーマにしたものを挙げてみましたが,今回はもっと社会性のある問題,時事的な問題の中から,「自由英作文問題」で頻出するテーマを拾ってみます。
まず「過去を振り返る」タイプとしては,「過去」に幅がありますが,
- 20世紀の日本の出来事で最も重要なのは何? (中央・商)
- 20世紀で最も重要な変化についての意見と,その変化が自分の生活に与えた影響
- 過去数年のニュースで興味深い・重要だと思った出来事 (香川)
- この1年で世界に起きた出来事のうち,最も重要なものは何か? (立命館)
そしてこれをやや科学技術方面に限定したものが,
- (1) 20世紀で最も偉大な発明発見 (2) それが偉大である理由 (3) それはむしろ最悪だ,という反論 (東京)
- 20世紀で最も重要な発明品は何 (立命館)
というものでしょう。
ところでこの東大の問題のように,東大は「一つの事象について相反する見方で見る」という複眼視点問題がよくでてきます。2002年の「(1) もし1月の休暇と十分なお金があればどんな休暇を過ごすか?(2) その意見への反論」というようなタイプです。語数が多くないので,深い議論はできませんが。
話を戻して,今度は「未来予測」型。
- 今から50年後の世界はどうなっている? (青山・国際)
- 2050年の世界はどう変わっているか (立命館)
- 今後50年で起きる交通手段の変化と生活への影響 (東京)
何かばくぜんとしていて書きにくそうです。せめて東大みたいに分野を限定して欲しいですね。
さて,意見を求めるタイプの自由英作でいちばん多そうなのが,現代のテクノロジー関連のテーマでしょう。
- コンピューターは生活を改善したか,悪化させたか? (学習院・国際)
- コンピューターの普及した現代において,人類が得たもの,失ったものそれぞれ1つ (立命館)
- インターネット利用の問題点 (学習院・国際)
- テクノロジーに発展による個人間のコミュニケーションの変化をどうとらえるか (早稲田・法)
- モバイル技術のわたしの生活への影響・現在と未来 (一橋)
中でも,携帯電話については,2000年ごろに自由英作文が激増し始めて以来ずっと最頻出でした。
- 携帯電話の利点 (学習院・国際)
- 携帯電話の利用をどう考えるか。健康への影響に関する議論を踏まえて。 (慶應・医)
- 若者は携帯(その他の電子機器)の奴隷か主人か (上智・外・二次)
- 携帯電話の利用の利点・欠点 (中央・商)
- 今日の携帯電話の使われ方をどう思うか? (立命館)
- 携帯のいい面・悪い面 (東北)
ここには取り上げていませんが,少し前には携帯電話(特にそのマナー)の問題が地方国立大では軒並み出題されたこともあります。今後は少し減るだろうと思っていましたが,まだ健在のようです。
さらに携帯関係では,
- 高校における携帯持ち込み禁止。賛成 or 反対? (早稲田・法)
- 12歳未満の子どもには携帯を禁止すべきか? (小樽商科)
- 小学生は携帯を持つべきか? (鹿児島)
という学校での携帯規制(今年もニュースになっていますよね)やメールについて,
- 携帯メールでの友人関係に何を求めるか (慶應・医)
- 手紙と電子メールはどちらが優れているか? (立命館)
- メールと手紙のどちらが好きか (青山・国際)
という出題もあります。
このへんまでは,高校生にとってもまだ身近な話題と言えるでしょうが,本格的な社会問題を書かせる問題も,もちろんいっぱいあります。
★ 犯罪
- 日本における犯罪数の推移のグラフを説明し,上のグラフの変化を説明できる理由を2つ以上あげる(北海道)
- 十代の犯罪増加の原因は何? (青山・国際)
- 少年犯罪にはメディアにも責任があるだろうか? (上智・外・二次)
- 犯罪被害者の権利 (青山・法)
- 外国人による犯罪は増加しているのか? (青山・法)
★ 死刑
- 死刑は犯罪の予防になるか? (電通)
- 死刑という手段は使うべきではない? (一橋)
★ 安楽死
- 安楽死の賛否に関するあなたの考えは?患者本人や家族に安楽死させることを求められたらどう答える? (浜松医科)
- 安楽死を社会的に受け入れてもいい時期になっている (一橋)
★ 少子化
- 出生率低下は問題ではない? (一橋)
- 1. 日本の出生率が低い原因 2. 出生率が低いことは将来にとって問題か,問題ではないか?どちらかの立場で。 (東京外語)
- 出生率低下を止めるのに役立つ方法(学習院女子・国際文化)
- 出生率低下による若年労働力不足の解決法 (中央・商)
★ 成人年齢引き下げ
- 18歳を成人年齢にすることについての賛否 (関西学院・総合政策)
- 成人年齢が20歳である現状(現状に賛成,引き下げる,引き上げる) (早稲田・法)
- 成人年齢は多くの外国と同じく18歳にすべき (一橋)
どれも限られた字数と時間では,かなり英語力があってもむずかしいし,上っ面をなでただけの議論になりそうで,出題者ももう少し限定をつけるなり,資料を与えるなりしてほしいところです。
社会的,とはいいにくいですが「外国語(英語)学習」「外国語(英語)教育」の話題も多いようです。
- 大学生は英語学習を必修とすべきか? (明治学院・心・文・法)
- 外国語学習は人生にどのようにプラスになるか? (東工大)
- これまで受けた英語の授業は役に立ったか? (電通)
- 外国語学習は将来どのような役に立つのか? (一橋)
- 小学校における英語教育の導入をどう考えるか(小1から?まったくやるべきでない?その中間?) (早稲田・国際)
これまで取り上げたのは,頻出問題と呼べそうなものばかりです。受験生は,練習用として「もしこのタイプが出題されたら何を書こうか?」くらいのことは考えておいた方がいいかもしれません。実際に英語で文章を書かなくても,日本語でメモを作る練習にはいいと思います。
当然のことながら,これ以外にたくさんの出題があり,毎年傾向も微妙に変わっています。ただテーマが与えられるだけではなく,長文やグラフなどの資料(英語の)つきの場合も多いですから,そうしたものにも慣れておく必要があります。
最後に僕のお気に入りの問題。
- 動物園の良い点と問題点両方 (立命館)
- あなたがペットなら,どんな主人がいい? (慶應・医)
- あなたの人生が映画だとしたら,そのタイトルは?なぜ? (一橋)
- 絶海の孤島で流れ着いた7人のうち1人しか連れ戻せないとしたら誰を選ぶ?(ただし残りの人も死にはしないし,救出の可能性もある。7人はアメリカ副大統領,妊婦,ふつうの十代の少女,国際的に有名な医者,著名な科学者,中年の糖尿病のおっさん,牧師) (青山・国際)
最後の問題をネタに使ったことがありますが,書いてきた生徒は副大統領を選びました。
「この人の力を使って,残りの人の救援隊を派遣させる。いいアイデアでしょ。」
まあね。でも,一人だけ帰って来ちゃったら,次の選挙は危ないかもね。