「ジーニアス」「ルミナス」「ウィズダム」「ロングマン」の4英和辞典の比較のシリーズ第7弾!
語法上いちばん問題になるのはなんといっても動詞でしょう。今回は動詞の語法をどのように表記しているのかを取り上げます。不定詞目的語をとれるか,that節をとれるかなどがわかりやすく記述されているかが比較のポイントになります。とりあげるのは,advise の他動詞。語法表記を比較したいので,必要でない例文はカットします。
ジーニアス
advise
(他)(1) a) [SVO to do / SVO that 節] <人・広告などが>O<人>に・・・するように[・・・することを]助言する,勧める; [直接話法で]「・・・」と勧める; [SV that節] ・・・だと忠告する
[語法] (1) (1)a)の意味では,that 節の動詞は《米・英正式》仮定法現在; should を用いるのは《英正式》。 (以下略)
b) [ SVO1 not to do / SVO1 against doing / SVO1 against O2 ] <人が>O1<人>に・・・しないよう[O2<事>をしないよう] 戒める,警告する
c) [SVO1 on [about, in] O2] <人が>O1<人>にO2<物・事>について助言する,忠告する 《◆ wh節が来る場合は前置詞の省略不可》
(2) [ SVO / SV doing ] <人が>O<事>を[・・・することを]勧める 《◆<物>をOとしない: recommend [× ~] a good book 》
(3) 《正式》《◆主に《商》で用いる堅い表現;一般には tell, inform, 《正式》notify 》 a) [SVO1 (of O2)] <人が>O1<人>に(O2<決定・日時など>を)通知する,<人>に[・・・について]知らせる[about]
b) [SVO (that) 節 / SOV (of) wh句] <人が>O<人>に・・・だと通知する
特徴は,advise という語をまず語法で分類し(1a, 1b, 1c, 2, 3a, 3b),その分類の下に意味を配置していることでしょう。ルミナスと比較してみるとこの特徴がよくわかると思います。見た目としては,この「ジーニアス」の分類法の方が整理された印象を与えます。
that 節の後ろが仮定法現在またはshould が来ることは,例文中には全辞書に書かれていますが,語法として記されているのは「ジーニアス」だけです。ただし,仮定法現在という文法用語ではちょっと不親切かもしれません。原形と書けばいいのですから。概して「ジーニアス」は利用者の文法力をやや高めに想定している感があります。
なお,(1)の c) に「《◆ wh節が来る場合は前置詞の省略不可》」という記述がありますが,これはほかの辞書には見当たりません。 wh 節が後ろに来るのはここだけなのですが((3) b) は句),google で “advised me which” という検索をかけたところ48400件該当し,この中にはwh 句も入っていますが,ざっと見積もるとその半分は節になっています。”advised me about which”は10件のみ,”advised me on which”だと20400件で,これらは句の方が多そうな感じです。「ジーニアス」のこの記述は勇み足の感を免れません。
ルミナス
advise
(他) 1 <人>に忠告する,助言する; (・・・に)<–すること>を勧告する; <事>を勧める: He ~d me on this problem. <V+O+on+名・代> / [言い換え] We ~d them to start early. <V+O+C(to 不定詞)> = We ~d (them) that they should start early. <V+(O+)O(that節)> = we ~d (them), “You should start early.” <V+(O+)O (引用節)> = 《格式》 We ~d their starting early. <V+O(動名)>
[語法] (1) to 不定詞の方が動名詞よりも普通。 (以下略)
You are strongly ~d to have a medical checkup. <V+O+C (to 不定詞)の受身> / [言い換え] She ~d me which to buy. <V+O+O(wh句)> = She ~d me which I should buy. <V+O+O(wh節)> / Please ~ me whether I should accept the offer. <V+O+O(whether節)>
2 《格式》《主に商》 <・・・>に通知[通告]する
advise をまず意味で2つに分け,その下に例文を置き,その例文を公式化した形をその後にまとめる,という形をとっています。ジーニアスよりもこちらの方が自然な分類でしょうが,自然な分,ごちゃごちゃした印象があります。advise A against B については,この分類法では収まりが悪かったのか,熟語として別扱いをしています。例文が先で,公式を後に置いているのは一長一短ありで,微妙なところです。辞書は例文を読むもの,なのですからこれでいいと言えなくはないのですが。
もうひとつ,他の辞書に見られないのは,[言い換え]が多用されていることです。何か,大昔の大学入試問題をほうふつとさせますが,でも悪くはないですね。
ウィズダム
advise
(他) 1 a 【 advise A to do 】<専門家・物事にくわしい人などが>A<人>に・・・するよう忠告する[強く勧める](!日本語の「アドバイス」と違い強制を含意)
b 【 advise (A) that 節/ wh 節・句 】 (A<人>に・・・ということ[・・・か]を忠告する; 《書》[直接話法] ・・・と忠告する (! (1) should の省略については→suggest (2) I advise him [his] starting at once. とすることもできるが《まれ》で,to 不定詞の型がもっとも普通)
2 【 advise A not to do 】 <人などが>A<人>に・・・しないように警告する,戒める; 【~ A against B/ doing】 A<人>にB<事>を[・・・]しないように忠告する
3 【 advise A on B / about B 】 <人などが>A<人>にB<物・事>について専門的助言をする
4 【 advise A/ doing 】 <人が>A<事など>[・・・すること]を勧める (!具体的な物品の推奨はrecommendを用いる)
5 《かたく》【 advise A of B /(that)節/ wh 節・句 】 A<人>にB<事実・状況など>を[・・・だと/・・・かを]通知[通告,伝達]する(!一般的な tell, inform と違い,ビジネス文書などに多用される)
分類は語法→意味という「ジーニアス」型です。「ウィズダム」はいちばん整理されて読みやすい印象があります。前二者にあっただいじなところはすべて押さえていて,SVOCではなく,do や A,B という記号表記も親しみやすいでしょう。
以前に触れておくべきだったかもしれませんが,見出し語が例文中に出てくる時,「ジーニアス」「ルミナス」は「~」という記号を使っていますが,「ウィズダム」「ロングマン」は基本的に見出し語をそのまま例文中で用いています。「~」はスペースの節約上使っているのでしょうが,見出し語そのままの方がはるかに読みやすく,「ジーニアス」「ルミナス」もそろそろこちらにした方がいいと思いますよ。
ロングマン
advise
1 a) 他 <人>に忠告する,助言する,アドバイスする | advise sb about/on sth <…>について<人に>アドバイスする | advise sb to do sth <人>に<…>するようにアドバイスする | advise sb against doing sth <人>に<…>しないように忠告する | advise that ・・・ということを勧める | advise caution/ patience/ restraint 用心[忍耐,自制]するよう忠告する
b) 自 略
2 a) 他 ・・・のアドバイザー[顧問]を務める | advise sb on sth <人>の<…>について顧問をする
b) 自 略
3 他 《フォーマル》<人>に伝える | advise sb of sth <人>に<…>について伝える | advise sb that <人>に・・・ということを伝える | keep sb advised of <人>に<…>を絶えず知らせる
分類タイプとしては,意味→語法の「ルミナス」型です。SVOC, A, B という記号ではなく,sb (=somebody) と sth (= something) を使っていますが,これは英英辞典で使われている方法です。前三者が「語法公式」のようになっているのに対し,「ロングマン」は文を切り出しているような印象を与えますが,これはこれで一つのポリシーになっています。自動詞と他動詞を大別してから解説するという従来の英和のやり方を捨てていますが,これも英英型です。仮定法現在の指摘がまったくないなど,語法説明は少し不親切な感じを受けざるを得ませんが,訳語のスッキリ感はあいかわらず個性的でいいと思います。「アドバイスする」という訳はこの辞書だけですね。
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