「ジーニアス」「ルミナス」「ウィズダム」「ロングマン」の4英和辞典の比較のシリーズ第6弾。
今回は語法解説の比較で残っている,副詞と動詞の語法解説を取り上げてみます。
副詞で取り上げるのは, only の位置。only は修飾する語の直前に置くことが多いのですが,それが別の位置に移動することがありますよね。それをどう説明しているのかを比較してみたいわけです。only の位置だけでも論文が1本書ける,という話もありますが,そんなに複雑でしたっけ。
ジーニアス
[語法] (1) only は通例修飾する語・く・節の直前か,時に直後に置く: O~ he [He ~] solved that problem yesterday. 彼だけが昨日その問題を解いた / He solved ┇ ~ that problem yesterday. = He solved that problem ~ ┇ yesterday. 彼は昨日その問題だけしか解いていない / He┇ ~ solved that problem yesterday. 彼は昨日その問題を解いただけだ / He solved that problem ┇ ~ yesterday [yesterday ~]. 彼はつい昨日その問題を解いた。
(2) 《略式》では動詞の直前[be 動詞,助動詞はその後]に置かれる傾向にあり,only に修飾される語は強く発音される: He ~ solved the problem yesterday. → (1) / I can take ~ [《略式》 ~ take] two of you in my car. 私の車には君たちのうち2人しか乗せられない。
(1) の「時に直後に」というのがくせ者ですね。挙げられている例文の中ではひとつめの Only he = He only 以外は後置する例はあまり見かけません。話し言葉では,間とアクセントで識別できる(辞書にはアクセント記号がついています。めんどくさいので省きましたが)わけですが,書き言葉では He solved that próblem ònly ┇ yesterday. と He solved that problem ┇ ònly yésterday. は区別がつかないわけですから,慎重な書き手ならば前者は避けるでしょう。(ó が第一アクセント,ò が第二アクセント。第一が一番強く,第二は二番目に強い。)
「ジーニアス」は全体的に,英語に出現する語法のあらゆるパターンの解説を目指しているようです。これは「読む」際にはおおいに助けになりますが,「書く」時,つまりnon-native として,相手に誤解を与えないような標準的英語は何なのかを知りたいときには,逆に足かせになるかもしれません。non-native が「発信」する時には,できるだけ標準的な英語での「発信」をこころがけるべきで,「そういう言い方もあるが,特殊な状況・文脈でのみ使える」とか「ある種の意図せざるニュアンスが含まれてします」英語は避けた方が無難でしょう。非常に詳しい記述は,「受信」型には懇切丁寧,「発信」型には不親切,になりえるということです。
ルミナス
[語法] only の位置
(1) (a) 《格式》では only は修飾する語の直前に置き,「…だけ」と強調する語が強く発音されるのが普通: O~ Tom saw the panda. トムだけがパンダを見た / Tom ~ saw the panda. トムはパンダを見ただけだった。(写真をとったりはしなかった) / Tom saw ~ the panda. トムはパンダしか見なかった。
(b) 話しことばでは(時に書きことばでも)動詞の後に来る語句を強調するときでも,only を動詞の前(助動詞や be 動詞の後)に置く傾向がある: Tom ~ saw the pánda. トムはパンダしか見なかった。 / Tom ~ saw [has seen] pandas on télevision. トムはパンダをテレビでしか見ていない。
(2) 《格式》では only が文頭に来る場合,語順が転倒することがある: O~ in sóme zoos can we see pandas. いくつかの動物園だけでしかパンダは見られない。
「ジーニアス」とは異なり,後置修飾の only については書かれていません。これは「ウィズダム」も同じです。
(2) の書き方は少しミスリーディングです。語順の転倒が起きるのは,原則として文頭に only のついた副詞的要素が来る時であって,たとえば主語に only がついても倒置にはなりえないからです。また,文頭に only つき副詞(句・節)を置くこと自体が《格式》ですから,「《格式》では文頭に only のついた副詞的要素が来ることがあり,その際は必ず語順が転倒する」という表記にした方がいいと思います。
ウィズダム
[語法] only の位置
(1) 主語を修飾する場合,《書》《話》を問わず直前に置かれる » Only my mother knew the truth. 母だけが真実を知っていた。
(2) 主語以外の語句を修飾する場合,《書》では修飾する語句の直前に置かれる。《話》では be 動詞,助動詞の後か一般動詞の前に置かれ,修飾語を強く発音することで区別する。» 《書》 I have visited Italy only once. ≒ 《話》 I’ve only visited Italy once. イタリアに行ったのはたった1回だけだ。
(3) 次のような例での意味の違いに注意 » Lisa is only a child. リサはまだ子供だ (only は[副]) / Lisa is an only child. リサは一人っ子だ (only は[形]) / Lisa was the only child in classroom who knew the answer. リサはクラスで答えがわかったただ1人の子だった ( only は[形])
(1), (2) で主語を修飾する場合と,主語以外を修飾する場合を分けて書いてあるのが特徴です。動詞付近に only が移動する現象は主語に only がかかる時には起きないという指摘です。確かに,言われてみればそのとうりですね。「ウィズダム」はときどきこの「そういえぱそうだよな」という指摘をしてくるようです。(3)については,「ジーニアス」では形容詞の only の項で説明されています。
ロングマン
only の位置を説明する項目・記述はありません。
ただし,例文には,直後を修飾する only と,動詞の直前(be, 助動詞の直後)に位置する only の両方の例が挙げられてはいます。たとえば, only because の例として,「 I only came here because I wanted to be near you. ここに来たのは,ただあなたの近くにいたかったからです。」が載っています。「自然な英語」のコーパスを用いているというのがロングマンの自慢のようです。
あ~,動詞に入らないうちに,もう時間になってしまった。まだまだつづきます。
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