= 知覚動詞 =
前回の「状態動詞と動作動詞」にも出てきた知覚動詞を取り上げます。前回触れた点は以下のようなものでした。
『視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五つの知覚を示す動詞を知覚動詞と言いますが,実はこれには2種類あって,たとえば「見る」は,look at ~ と see の二つありますが,look at は有意志知覚,つまり「見ようと思ってみる」(意志を伴う)ですが,see は無意志知覚,つまり「見ようと思ったわけではないが見えてしまう」(意志を伴わない)という性質を持つ動詞です。有意志知覚は進行形にすることができるが,無意志知覚は進行形にできないのです。』
これに,He looks tired. 「彼は疲れているように見える」の look のような「S は C の様子をしている」型を加えると,こんな表ができます。
有意志知覚 | 無意志知覚 | 様子 | |
視覚 | look at (見る) | (can) see (Oが見える) | look (Cに見える) |
聴覚 | listen to (聞く) | (can) hear (Oが聞こえる) | sound (Cに聞こえる) |
嗅覚 | smell (においをかぐ) | (can) smell (Oのにおいを感じる) | smell (Cなにおいがする) |
味覚 | taste (味わう) | (can) taste (Oの味を感じる) | taste (Cな味がする) |
触覚 | feel (触ってみる) | (can) feel (Oを感じる) | feel (Cな手触りがする) |
この中では,feel が意味が広いので注意ですが,それ以外はなんてことはない,注意するのは視覚と聴覚だけですね。ほかは3つとも同じです。
● 無意志知覚では継続的に「見えている」「聞こえている」などの意味を表す場合,原則として進行形にできないので,そのかわりにしばしば can が使われます。
● 「様子」の動詞はふつう進行形にしませんが,lookは一時的なことであれば進行形にすることもあります。また,C が名詞の時は,like, of などを伴うことがよくあります。look like は有名ですね。Cが形容詞の時はlikeはつけませんよ。 The room smells of flowers. その部屋は花の匂いがしている
知覚動詞は,S+V+O+C の文型で使えることはよく知っていると思います。(もちろん,上の表の「様子」はS+V+C で使うので,以下の形はありません。)
see + O + V(原形) OがVするのを見る hear + O +V(原形) OがVするのが聞こえる
see + O + Ving OがVしているのを見る hear + O + Ving OがVしているのが聞こえる
see + O + p.p. Oがp.p.されるのを見る hear + O + p.p. Oがp.p.されるのが聞こえる
(Ving は現在分詞, p.p. は過去分詞)
● これらの形で使われるのは,上記の有意志・無意志の知覚動詞以外では,notice, observe, perceive, watch などがあります。ただし taste は意味上,この形になりません(「何かが~しているのを味わう」ってことないですよね)し,smell は分詞はいいけど不定詞はダメ,look at は原形を使えるのはアメリカ英語のみ,といった制限もあります。
● 原形を使う場合と,現在分詞を使う場合の違いは,たとえば,
I saw her speak to Tom. 彼女がトムと話すのを見た。(話す場面を最初から最後まで見た)
I saw her speaking to Tom. 彼女がトムと話しているのを見た。(話す場面の一部を見かけた)
というように,行為の全体か一部かの違いになることが多いです。
● また,これを受け身にする時は,現在分詞はそのままですが,原形の時にはto + V(原形)に変わる,というのも入試では基本レベルですね。
She was seen to speak to Tom. 彼女はトムと話すところを目撃された。
She was seen speaking to Tom. 彼女はトムと話しているところを目撃された。
● 知覚動詞ではなくて原形の方が受け身になる場合はbe がつけられません。
☓ I saw Tom be spoken to by her.
〇 I saw Tom spoken to by her.
最後に,次の2つの文を比べてください。
- I saw the door open by itself.
- I saw that the door opened by itself.
上の文は,「そのドアがひとりでに開くのを見た」,下は「そのドアはひとりでに開くことがわかった(見てとった)」となります。see O + V(原形) は文字どおり目で「OがVするのを見る」ことであるのに対し, see that S + V は目で見るというよりも,情報・知識として「SがVするのがわかる・理解する」の意味になります。同様のことが,hear + O + V(原形) 「OがVするのを(耳で)聞く・聞こえる」, hear that S + V 「SがVすると(いう話・噂・情報を)聞いて知っている・~だそうだ」となります。