少し具体的に考えてみます。ただし,試験場でどう対処するかというよりも,今の時点で,試験場に向けてどのような対策をすればいいのかを考えるのが主眼です。
以下に載せるのは,2008年度早稲田大学法学部の問題です。
The way people communicate has changed greatly over the past few years.
Some people argue that personal relationships have improved because of new technologies, and others argue that they have weakened. What do you think about this?
Write a paragraph defending ONE of these positions, giving at least one appropriate reason to support your answer.
『コミュニケーションの方法はこの数年で大きく変化しました。新しい技術のおかげで人間関係がより良いものになったと論じる人もいる一方で,貧弱になったという人もいます。この点についてあなたはどのように考えますか。
上の立場のうちひとつを擁護する1パラグラフの文章を,自分の答となる意見を支える適切な理由を最低1つあげた上で,書きなさい。』
少し上の問題を考えてみてください。どちらを選ぶか,その理由は何かを,日本語でいいからかんがえるといいでしょう。
問題の条件を整理すると,
- この数年の技術の進歩が人間関係に与えた影響について,
- よい変化を与えた,または,悪い変化を与えた のどちらかの立場で,
- 1パラグラフの文章を,
- 理由を必ず挙げた上で,
書け,というものです。注意すべきは2かな。「いい面もあるし,悪い面もある」のような両論併記は禁止,ということなので,仮りに自分の意見とは逆の意見を紹介する場合は,それに反論を加えておかなければダメ,ということになります。
さて,条件を確認したら,次に何を書くのかのメモ作成作業に取りかかります。
内容をまとめる上でまずやっておくことは,何について書くことが求められているのかを誤解せずとらえること,それに,その要求を分析・分割・分類して,考える手がかり・足場を作ることです。この「何について書くことが求められているのか」をしっかり理解することの大切さを忘れがちなので気をつけたいところです。
問われているのは,『この数年のコミュニケーション技術の進歩が人間関係に与えた影響』。
結論として「人間関係がより良いものになった」を選ぶか,「人間関係が貧弱になった」を選ぶか,最初に決めてからその理由をあげてもいいし,逆にいろいろプラス面マイナス面を列挙してみて,それらを考え合わせた上で結論を選んでもいいでしょう。
これを前半と後半に分け,前半については,『この数年のコミュニケーション技術の進歩』が携帯電話(メールを含めて)やインターネット(それ以外でもいいが「コミュニケーション技術」であること)を指しているのだろうと考えておきます。
後半の『人間関係』の方を分類して,家族・友人・社会全体に分けられ,そのそれぞれでプラス面またはマイナス面を考えることになります。どんなことが考えられるでしょうか?
プラス面を挙げる時に1つ注意したいのは,うっかり,「携帯があると,人と待ち合わせに便利」とか「ネットのおかげで知らない人と友だちになれる」とか書いてしまいそうですが,それではピント外れだったり,舌足らずになってしまいます。聞かれているのは 「どう便利になったか」ではなく,「人間関係にどうプラスになったか」ですから前者はピント外れ,後者は「人間関係」についてなのはOKですが,その関係を本当に「友だち」と呼べるのかには説明が必要ですし,知り合いを増やすこと=「人間関係が良くなる」とは限らないので,さらにことばを加えなければなりません。ネットや携帯が人間関係に変化をもたらすのは確かなのですが,「良い」―「悪い」を決めつけなければならないテストにおいては,あまり深くつっこんだことも書けないようです。
とはいえ,試験では時間もないので,どんなメモでも良いから,とりあえず思いつくことを片っ端から挙げてみましょう。
- 携帯の「良い」面
- 家族 ― 面と向かって言えないことがメールだと言える。
- 友だち ― いつでも連絡が取れる。
- 携帯の「悪い」面
- 家族 ― 家族でいる時もメールに向かっていて,家族の会話が少ない。
- 友だち ― 常に連絡を取っていないと友達じゃなくなる感じがする。
なんていうメモでいいのですが,これはまだ出発点です。