英文法参考書をさらっと見ていくシリーズの第6弾。
そもそもこの種の文法参考書が書店から消えつつあるような印象を受けます。中高の英語教育がコミュニケーション重視となっているというのが理由の一つに挙げられるのかもしれません。コミュニケーション重視については今は取り上げませんが,学校教育で文法に真正面から向かわないのであれば,なおさらこの種の文法書が必要になるはずです。コミュニケーション重視型教育では文法項目順に進んでいくわけではないので,「なぜ」という疑問には答えずにはなしが進んでいきがちだからです。
★ マスター英文法 (全面改訂版 中原道喜 著 聖文新社 2008)
これは以前はメジャーだった本。著者はあの開成高校教諭。受験英語に関して多くの著書があり,業界では有名な方です。
2008年に改訂版が出たのですが,本屋で立ち見した限りでは旧版とあまり変わっている気がしなくて,実は買っていません。買ってもいない本をコメントしたくないのですが,一応参考まで。以下はあくまでも旧版についてです。
内容的には非常にまとまった大学受験生向きの英文法書です。
レイアウトや叙述のしかたは,すこし(かなり)古めかしい感じがしますが,そういうのが好みの読者もいると思います。見映えを変えればまだまだ使えると思うのですが,出版社ももう少し考えればいいのに。
- 読者対象 英語が平均レベルの高校生~大学生(英語専門以外)
- 使用目的 大学入試レベルの英文法知識の確認
- 長所 ほかの本の著者が大学教授であるのに対し,この著者は高校教師であることから,受験を念頭に置く度合いは高い。
- 短所 レイアウト的に見て,大きな本から必要な情報だけを読み取ることに慣れていない人にとっては,とっつきにくいかも。
★ depth 英語総合 (町田健,高沢節子,豊島克己 著 河合出版 2005)
河合塾で出している問題集系はたくさんありますが,英語参考書はこれだけ。著者代表の町田先生は最近ではよくテレビにも露出している言語学が専門の名古屋大教授です。(昔はモー娘時代のなっちファンだと書いていましたが,最近は時東あみファンを公言しています。どうでもいい情報だが。)この先生は以前河合塾に出講していて,他の二人の著者も河合の先生です。
全体的にはイラスト満載で,余白が多くて(他の本は余白がかなり少ないです),内容の図解もあり,ここで取り上げた本の中ではいちばん取っつきやすいでしょう。逆に言えば辞書的に情報を詰め込んではおらず,大学受験に必要ないものは徹底的に省いてあるという印象です。これくらいなら通読は不可能ではありませんが,時間効率を考えればやはり辞書的使い方でよいと思います。
- 読者対象 高校生1年生~大学受験生
- 使用目的 大学入試レベルの英文法に不安を感じる人のレファレンス
- 長所 読みやすい。説明が簡潔。意外な切り口や詳しいところも。
- 短所 ポイントが絞り込んであるので,探しても知りたいことが見つからないこともあり得る。
ほかにも,参考書はあるのですが,とりあえずこんなところで。
次回は,とりあげた8冊の横断的比較の予定。