暗記用単語集を使って無理やり強引に単語を覚えていく,というのは外国語の学習にとってかなり不自然なことであるのは間違いないでしょう。しかし,そもそも現在の大学入試で求めている英語力・単語力は相当高く,その一方現在の高校生の大半は,あたりまえの高校生活をしているとその実力はあまり高くないのがふつうです。たとえば指導要領を作っている側が高2の時点までにつけるべきだと考えている実力と,現実の高2終了時点の生徒の実力には大きな落差があります。その落差を高3の1年間で埋めなければなりません。それを入試に課される全科目でやらなければならないわけですから,もともと無理があります。つまり,大半の受験生にとって,受験というもの自体が不自然な仕組みであって,不自然なことに対応するには,単語を無理やり詰め込むといった不自然な勉強法も仕方ないのだと思います。
単語を覚えるという作業は,これしかないっ!というような魔法の方法があまり見当たりません。「これであなたも単語が楽に覚えられる」という営業トークはどこにでもありますが,そんな方法を探しているヒマがあれば1つでも2でも覚えた方がましです。「この〇〇法で覚えられた」という声を聞くこともあるでしょうが,そういう人は結局「その方法でがんばれた」というだけであり,他の方法でもがんばればできたはずです。
次の方法は昔からみんなやってきたことで,ごくごくあたりまえのやり方ですが,最近の高校生の中にはこういう当たり前のことが共有されていない人が結構たくさんいますから,あえて念のために確認しておきます。
- 単語とその意味を頭の中で繰り返し念じるように覚える
- メモ用紙やノートなどに何十回も書きながら覚える
- 右側の意味欄を下敷きなどで隠して,単語だけ見て意味が言えるようにする
これらをちょっと高級化(?)して,パソコンやCDやMP3ブレーヤーを使ってもいいですが,それはメディアを変えただけでやることは大して変わりません。
むしろだいじなのは,繰り返し方や繰り返すタイミング,いつ次へ進むかなどですが,これはその人の個性によって何が最良かが変わるかもしれません。一般的には,
- 上の方法を単語5個~10個くらいまとめてやって,それをワンセットとする。
- ワンセットが終わったらもう一度そのセットの始めに戻る。
- ワンセットにつき3回くらいやれば,覚えにくい単語が見えてくるので,それをマークして,それだけをもう2回くらいやる
- 次のセットに進んで同じ繰り返しをする
- 3セットくらい終わったら,また最初のセットに戻って,その3セットを通しでやり直し。覚えていると思ったのに忘れていたら,追加マーク。
- 最後に,マークのついたものを2回くらい
これで,5個ずつなら3セットで15個,10個ずつなら30個を覚えたことになります。でも,しばらくしたらまた忘れているはずです(それがあたりまえです)。できれば翌日,妥協しても3日以内にもう一度やりなおします。セットごとにやるのは同じですが,
- 1度通しで全部チェックし,忘れているものにマークをつけなおす。
- 覚えているもののマークを線で消す(消しゴムで消さない)。
- もう一度マークのものだけ覚えなおし。
- それが終わったら,復習は終わりで,その日の分の新しい3セットに進む
これを繰り返し続けていきます。50~100個くらい終わったら,一度全部復習してみるといいでしょう。単語は忘れるものです。覚えるというのは繰り返すこと,なのです。
なお,単語を必ず何度か発音してください。別の項目にも書きましたが,発音できない単語は覚えられず,発音できなくても覚えていると主張する人は,テキトーな発音で覚えているということです。テキトーな発音で覚えるくらいなら,ちゃんとした発音で覚える方がいいにきまってます。きれいな発音である必要はないので,正しい発音で覚えてください。この点では音声データ付きの単語集が有利です。少なくとも発音記号は読めるようにした方がいいでしょう。