自由英作文問題としては,私大で最高の難問と言っていい慶應・経済の問題 3 。かなり苦戦する人が多いんじゃないでしょうか?特に,2006年から語数が 70 語から 100 語にアップし,かなり時間もとられます。語数アップは慶應がこの問題を重視していることの表れでもあります。どうせ差はつかない,点もたいして取れないんだからと投げてかかっていい問題ではありません。生徒たちがやった問題を添削した経験からも,大量得点とまではいかなくても,結構いい答案を書く人はいくらでもいますから,得点源にすることはじゅうぶん可能です。
自由英作文問題対策についての,一般的な考え方については
で触れておきましたので,読んでいない人はそれも参考にしてください。
自由英作文にどれだけ重点を置くべきか?
英語の試験時間は100分。2005 年以前(つまり自由英作が100語以上になる前)は,文法問題や,長い会話問題がありましたが,2006, 2007 年はかなり長い長文2題+自由英作(100語)です。
したがって,すべてをまんべんなく解くためには,1 と 2 (長文)で合わせて60 分(最長75 分),自由英作に40 分(最低25 分)という時間配分になります。
1と2がこの時間で終わらない人,またはもともと英語を書くことが不得意で3で高得点は望めない人は,どうしたらよいでしょう?また,ふだんならヨユーで長文が解けるのに,本番ではあせってしまう,ということだってありえます。傾向がガラッと変わることだってありえます。この場合,リスク覚悟で長文に全力を注ぎ,15分前後で英作をまとめるしかテがありません。
慶応経済・自由英作文問題の特徴
過去問をやった人は知っているとうり,慶応経済の自由英作文には他の大学の自由英作文には見られない特徴があります。
- 図・表・グラフ・地図などのデータが与えられており,それらをしっかり分析しないと文章が書けない。
- 問題にはさまざまな条件が付けられており,条件を見落とすとせっかくの答案がだいなしになる。
- データの分析を踏まえて,自分の意見を書くわけだが,2002年以降はそれを「提案書」のような形でまとめることが求められている。受験生は,企業や政府の担当者という立場に置かれるという設定。
- 「提案」は,プランA, プランB のような形で与えられていることもある。
- 自由英作文問題だから,それらの選択肢のどれを選んでもかまわないし,実際,問題文にも「どの案を選んでもかまいません」と書いてある。しかし,あまり知られていないが,年度によっては選択肢に,「正解」とまでは言わないが,書きやすい選択肢と書きにくい(これを選んでしまうと,よほどのアイデアがない限り論理的にまとめにくいような)選択肢がある場合がある。
- プランは,理想重視か現実重視か? 短期的利益を追求すべきか,長期的利益を追求すべきか? という選択になっていることがある。
どの選択肢を選ぶか?
上で述べた特徴のうち,最後の2点について,各年度の過去問で具体的に考えてみましょう。あくまでも「書きやすさ」を考えて選ぶというねらいです。それ以外のアイデアがあればどれでもかまいません。
2007年 エイズ対策のNGOの2010年度までの予算作成(100語以上)
提案選択肢なし。3つの支出パターンが挙げられているが,これらは選択肢ではない。
- large budget (予算をふやす)
- numerous project (計画をふやす)
- many workers (人員を増やす)
これらは「案ではありません」と書かれているところがポイント。つまり,これらを組み合わせてよいと言っているに等しい。こういう問題設定なら,いろんな重点の置き方が考えられ,それほど書きやすい–書きにくいの差は出ません。無難なのは,最初 1+3 ,徐々に2を目指すというあたり。
2006年 アフリカの貧国の都市での洪水に対する災害対策(100語以上)
提案選択肢は,
- Sianam-led Reconstruction Program(独自の復興計画) — 長期復興計画
- Humanitarian Aid Program(人道支援計画) — 短期復興計画
- International Appeal(国際援助の要請)
問題文には,「災害対策案の選択肢として」とあるので,「貧困地区の全ての家が全壊」しているのにあまり悠長なことはできず,2 か 3 が書きやすい。
2005年 サンドイッチ店出店計画の改善点 (70語以上)
提案選択肢なし。考慮すべきポイントは,
- 平均待ち時間(20分)
- メニューと値段(サンドイッチ1500円 3種類,ドリンク800円 2種類)
- 営業時間(10AM~7PM)
- 日曜閉店
- 地図 (近くに高校,塾,コンビニ,住宅地)
トリッキーな設定です。見逃しやすいですが,問題文に「お客さんの前でサンドイッチを作る形式のファーストフード店」と書かれています。「20分待たされて,どこが fast food なんじゃい」とツッコミたくなる気持ちを抑えて,この「お客さんの前でサンドイッチを作る」というのは普通のサンドイッチではなく,プレミアムサンドイッチ(?)でしょうから,値段が異常に高いのも理解はできるというものです。「値段を下げる」というのもテですが,近くにコンビニがあることを考えると,値段よりも営業時間や日曜開店やメニューを増やすという方が現実的かも。
2004年 駅前のビルを利用した市民用施設の建設案(70語以上)
提案選択肢は,
- childcare center
- free community space
- public library
問題文にはそれぞれの特徴が書かれていますが,「以下の資料および地図は使っても使わなくてもかまいません」とあります。結局制限がないわけで,この年は比較的自由に選べます。
2003年 3人の奨学金留学候補生のうちから一人を選ぶ(50語以上)
提案選択肢は,
- Hitomi (成績良,英語力高,国連職員志望,国際政治研究目的)
- Mai (成績中,英語力低,教師志望,英語力向上目的)
- Ryota (成績低,英語力高,映画監督志望,異文化体験目的)
現在の成績で選ぶべきか,将来性を考慮して選ぶべきかという対立が見えます。奨学金は頑張ったご褒美であるという考え方に立てば1, 奨学金は将来社会に役立つ人材に与えるべきという考え方に立てば,1 か 2 。つまり 1 がいちばん書きやすい。
2002年 アフリカの貧国の開発プラン(50語以上)
提案選択肢は,
- National Park at Jumbi
- Copper Mine (銅鉱山) at Urza
1 は利益は多くはないが安定した観光立国志向,2 はてっとり早くがっぽり儲かる短期的利益志向。まあ 1 の方が優等生的ではありますが書きやすいでしょう。1 に道路が必要とありますが,地図を見るとすでに近くには空港も鉄道もあります。必要経費は少なくてすみそうです。1 を実施するために 2 で稼ぐという書き方もアリですが,2 の問題点の「汚染」が観光の足を引っ張るかもしれません。
最後に
答案作成の手順は,
データ・問題条件の分析 –> メモの作成 –> 作文 –> 見直し
になりますが,全体で 40 分取れれば,分析・メモに15分,作文に20分,見直し5分 というあたりになるでしょうか。時間がない場合でも,分析・メモに10分,作文に15分がぎりぎりでしょう。とにかく,慶應・経済はデータの分析で勝負は半分決まります。メモの取り方は,自由英作文問題の直前対策を参考にしてください。大ポイントの下に小ポイントを整理するところがミソです。
過去問は2回やってみる
すでに過去問をやった人も,赤本の解説を読んだ上で,または上に書いたポイントを頭に入れた上でもう一度書いてみてください。制限時間を25分くらいにして練習しておくといいでしょう。そこそこ書けるかな,という自信が出てくればしめたものです。
作成日 2008.02.07 Ver. 0.8