「接尾辞」とは,
たとえば communication, generation の -ation, beautiful, wonderful の -ful のように,単語の末尾にくっつく,単語の一部分を言います。
単語には dog とか book のようなそれ以上分解できない単語もあれば,dog + ie で doggie(ワンちゃん,犬の)とか,book + ish で bookish(本好きの)というように,要素が合体して一語になる単語もあります。
単語の要素のうち,中心部分(doggie の中のdog)を語幹(ごかん: stem または base )と呼び,語幹の前や後ろにくっつく要素は接辞(せつじ: affix)と呼びます。接辞のうちで,前からくっつくものは接頭辞(せっとうじ: prefix),後ろからくっつくものは接尾辞(せつびじ: suffix)と呼ばれています。なお,接頭語・接尾語というぐあいに「辞」ではなく,「語」を使う人もいますが,接辞は単語ではないので混乱を避けるため「辞」で言う方が正式です。
ここで取り上げるのは後ろにつく接尾辞ですが,接尾辞にも
- 屈折接辞 ( inflectional suffix ) 名詞の複数形の -s とか,動詞の過去形の -ed のような文法的な機能を示すための語尾。「屈折」とは活用形だと考えればよい。数はあまり多くはない。
- 派生接辞( derivational suffix ) 最初に挙げた -tion, -ful のような元の単語(語幹)から他の品詞をつくる(たとえば,beauty 「美」から beautiful 「美しい」を作る)ために使われる語尾。数は多い。
の二種類があります。屈折接辞は文法関連のはなしなので,ここでは派生接辞を扱います。めんどうなのでこのページでは派生接辞を接尾辞と呼ぶことにします。
接尾辞の便利なところは,これを知っていれば覚える単語が少なくてすむ点です。知らない単語に出会っても,接尾辞から品詞が,語幹から意味の推測が可能です。また,品詞がわかれば文の構造を把握できます。
もっとも,規則どおりにはいかないものもたくさんあります。-al はおもに形容詞を作る接尾辞ですが,mind の形容詞は,mindal ではなくて,mental です。語幹自体が変わってしまうわけです。ひとつずつ覚えていかなければならないことになりますが,それでも知ってると知らないとでは覚える手間がだいぶ違うでしょう。
おもな接尾辞のリスト
A. 名詞を作る接尾辞
(1) 語幹が名詞のもの(名詞 + x = 名詞)
抽象名詞または物質名詞(不可算)
- -age ・・・ 「~の集合」「~の割合,~の数量」 baggage (手荷物 [bag などのその人の運ぶ荷物全体]), mileage (マイレージ,マイル数,燃費[1ガロンで何マイル走るか])
☆ -ageは,名詞にも動詞にもくっついて,抽象名詞を作れる。動詞にくっつくものはA-(2)-4を参照。 - -dom ・・・ 「~である人々すべて」 officialdom (公務員(全体))
☆ やや侮蔑的ニュアンス。あまり多くない。この接尾辞でいちばんよく見かける kingdom (王国)の場合は,-domは「~の地位,領地」の意味で,しかもこの kingdomは具体的な意味の可算名詞になる。 - -ery, -ry ・・・ (1) 「~の状態,~の行為」 slavery (奴隷制[slaveはひとりひとりの「奴隷」]),drudgery (単調でつらい仕事[drudgeは「そういう仕事をする人」]),bravery (勇敢さ[ただしこれの語幹は名詞でなく形容詞のbrave 「勇敢な」])
(2)「~の集合,~類」 machinery(機械類 [一台一台の機械はmachine),poetry (詩歌[一つ一つの詩はpoem])
(3)「~の場所」 nursery (育児室,保育所 [nurse 保育士]) ,bakery (パン屋(の店) [baker は「パン屋」という人])
☆これは重要。-ery か -ry かは,語幹の語尾で決まる。語幹の語尾が-d, -t, -l, -n, -e の時に -ry になることが多い。 - -hood ・・・ 「~の時期」「~の状態」「~の集団」 childhood (子ども時代),neighborhood (近所 [ひとりひとりの「隣人」がneighbor),brotherhood (兄弟の間柄,兄弟愛),falsehood (虚偽 [ただし,これの語幹は形容詞のfalse 偽りの])
☆発音が伸ばすフードではなく,短い[hud]であることに注意 - -ing ・・・ 「~類」「~に関係する活動」 tubing (管類)
☆これは名詞+ing で数は少ない。多いのは動詞+ing でA-(2)-7で取り上げる。 - -ism ・・・ 「~主義」「~の行い・状態」 pacifism (平和主義),barbarism (野蛮な状態(行為)),criticism (批評)
☆「~主義者」をあらわす -ist はA-(4)-3。 - -(o)cracy ・・・ 「~による支配」 democracy (民主政 [demo-は「人々・大衆」を表す接頭辞),meritocracy (エリート支配,実力主義)
☆これから生まれた -(o)crat は次の「具体的意味を持つ名詞」の8。 - -ship ・・・ 「~の状態,性質,地位,能力,層」 friendship (友人であること,友情[状態]),leadership (指導者としての地位,指導力),readership (読者層)
☆ hardship (困難)のように形容詞につく場合もある。
具体的意味を持つ名詞(可算)
- -eer ・・・ 「~に関する技能を持つ人」「~に従事する人」 engineer (技術者),mountaineer (登山家)
☆ profiteer (暴利をむさぼる人),racketeer (ゆすりをする人)のように侮蔑的意味を含む場合もある - -er ・・・ 「~の住民」「~の関係者」「~の性質を持つ人・もの」 New Yorker (ニューヨーク市民),three-wheeler (三輪車),old-timer (古株,老人),teenager (十代の人)
☆ 動詞+er はA-(2)-3。いずれにせよ,「~の人」がふつうだが,「もの」になる場合もあるので注意。 - -ess ・・・ 女性名詞を作る語尾。princess (王女),actress (女優)
☆ PC の関係で,減少しつつある - -ette ・・・ (1) 「小さいもの」を表す語尾 「~の小さいバージョン」というかんじ。cigarette (たばこ [cigar 葉巻]),kitchenette (簡易台所)(2) 女性語尾。(3) 「模造品」「代用品」
- -let ・・・ 「小さいもの」を表す。 booklet (小冊子)
- -ling ・・・ 「小さいもの」「劣ったもの」「子ども」を表す。 ugly duckling (みにくいアヒルの子)
☆いろんな品詞について侮蔑的意味になることがある。 underling (下っぱ) - -y, -ie ・・・ 「かわいい~」「~に関係する人」 daddy (おとうさん),doggie (ワンちゃん),junkie (麻薬中毒者)
☆愛称的に,またはそれを通り越して皮肉っぽく使う。 - -ster ・・・ 「~する人」「からに関わりのある人」 gangster (ギャング [gang 仲間,グループ])
- -(o)crat ・・・ 「~の支持者,一員」 democrat (民主主義者),bureaucrat (官僚(の一員))。
(2) 語幹が動詞のもの(動詞 + x = 名詞)
次のうち,1 ~ 3 は人(もの)関連, 4 ~ 8 は抽象名詞(一部,普通名詞)を作るもの。
- -ant ・・・ 「~する人・もの」 inhabitant (住民 [inhabit 住む]),participant (参加者 [participate 参加する]),lubricant (潤滑剤 [lubricate 滑らかにする])
☆形容詞を作る -ant はB-(2)-3。 - -ee ・・・ 「~される人」 employee (従業員 [=employ される人]),examinee (受験者 [= 調査される人])
☆ 「動詞の受け身の意味+人」になるのが特徴だが,受け身でない場合もある。 absentee (欠席者),refugee (難民 [=避難する人]) - -er, -or ・・・ 「~する人・もの」 いちばん一般的なタイプだが,ものでも使えることに注意。employer (雇用者 [=雇う人]),computer (コンピューター [compute 「計算する」もの])
- -age ・・・ 「~すること」「~した結果」 leakage (漏らすこと,漏れたもの [leak 漏れる,漏らす])
- -al ・・・ 「~すること」「~する状態」 refusal revival
- -ation (-ion, -ition, -sion, -tion, -xion ) ・・・ 「~する動作」「~する状態」「~した結果」 decoration (飾り [decorate 飾る]), examination (調査,試験 [examine 調べる])
☆ -ateで終わる動詞(D-1),-ifyで終わる動詞(D-3),-izeで終わる動詞(D-4) を名詞化する時はこの接尾辞を使い,それぞれ -ation, -ification, -ization となる。 - -ing ・・・ 「~すること」「~した結果」 building (建物),clothing (衣類 [clothe 着る]),learning (学習)
☆ 動詞に-ingがつけば動名詞になるが,この派生接辞としての-ingは動名詞がさらに完全に名詞になりきってしまったものと考えることができる。earnings (所得 [earn 稼ぐ])のように複数形でのみ使われるものもある。 - -ment ・・・ 「~すること」「~したこと」「~させるもの」 amazement (驚き [amaze 驚かせる]),management (管理,経営,経営陣),pavement (舗装,車道 [pave 舗装する])
(3) 語幹が形容詞のもの(形容詞 + x = 名詞)
- -ity ・・・ 「~であること」「~さ」「~性」 rapidity (速さ,速度 [rapid 速い]),humanity (人間性,人類 [human 人間的な])
☆ -ableで終わる形容詞,-alで終わる形容詞,-arで終わる形容詞,-ibleで終わる形容詞につくと,それぞれ -ability, -ality, -arity, -ibility になる。accountability (説明責任),actuality (現実性),regularity (規則性),possibility (可能性) - -ness ・・・ 「~であること」「~さ」「~性」 kindness (親切,やさしさ),happiness (幸福)
☆ これはかなり多く,造語能力も高い。
(4) 「~人(の)」という名詞・形容詞を作るもの
上の(1)~(3)は名詞を作る接尾辞だが,これは名詞にも形容詞にもなる。たとえば,Japanese は「日本人」という国民名の名詞と「日本語」という国語名の名詞,および「日本の」「日本人[語]の」という形容詞になる。
- -ese ・・・ 「~人(の)」「~語(の)」「~の」 Japanese, Portuguese (ポルトガル人[語](の))
- -(i)an ・・・ (1) 「~人(の)」「~語(の)」「~の」(名詞・形容詞) American, German
(2) 「~に精通した(人)」「~を信奉する(人)」(名詞・形容詞) Shakespearian (シェイクスピアの,シェイクスピア学者),Darwinian (ダーウィンの(信奉者))
(3) 「~に関連した(人)」 historian (歴史学者), magician (マジシャン), urban (都会の) - -ish ・・・ 「~人(の)」「~語(の)」「~の」 British, English
☆ B-(1)-3 にも-ish は出てくるが,こちらは国民・国語名の名詞になれる。 - -i ・・・ 「~人(の)」「~語(の)」「~の」 一部の中東諸国に関して使われる。 Iraqi (イラク人,イラクの [国名は Iraq]),Israeli (イスラエル人,イスラエルの [国名は Israel ])
- -ist ・・・ 「~主義者」「~する人」「~の専門家」 anarchist (無政府主義者), cyclist (自転車に乗る人),cellist (チェロ奏者)
☆そのまま形容詞として使えるものもある socialist (社会主義者,社会主義的な) - -ite ・・・ 「~の住民」「~の信奉者」 Tokyoite 「東京人」
◎発音は[-ait]。
B. 形容詞を作る接尾辞
respectful (ていねいな), respectable (尊敬すべき), respective(それぞれの) のように,語幹が同じだが,接尾辞によって意味の異なるものがあるので注意。→ (英文法ライブラリー 名詞・形容詞・副詞 の「類似の形容詞」の項参照。)
(1) 語幹が名詞のもの(名詞 + x = 形容詞)
- -ed ・・・ 「~を持った」「~の性質を備えた」 pointed (先のとがった),one-eyed goblin (ひとつ目小僧),aged (年老いた)
☆これは 名詞+ed なので,過去分詞から来る-ed (B-(2)-2)とは違う。受け身の意味は持たない。合成語でよく使われ,造語能力が高い。 - -ful ・・・ 「~に満ちた」「~の性質がある」「~をもたらす」 おもに抽象名詞+ful。 wonderful (ふしぎな,すばらしい [wonder 不思議]),useful ([use (名詞)使用,有用性]),successful (成功する)
☆ forgetful (忘れっぽい)では語幹が動詞。 -ful が名詞になるものもある。a spoonful of ~ (ひとさじの~) - -ish ・・・ (1) 「~のような」 childish (子どもっぽい),foolish (ばかな)
☆名詞につく -ish は好ましくない意味の形容詞になることが多い。
(2) 「いくぶん~な」coldish (やや寒い)
☆これは形容詞についた場合。
(3) 「~くらいの」 sixtyish (60歳くらいの)
☆これは数字につき,主に年齢を表す。 - -less ・・・ 「~のない」「~を欠いた」 useless (無用の),harmless (無害な)
☆-ful の反対語を作る - -like ・・・ 「~のような」「~らしい」 childlike (子どもらしい)
☆-ish が好ましい意味になりがちなのに対し,こちらは良い意味になるか,単に「~に似ている」の意味 - -ly ・・・ (1) 「~のような」「~らしい」 womanly (女性らしい),friendly (やさしい)
☆-ish とは反対に良い意味のものが多い。なお,この -ly は,名詞+ -ly = 形容詞 になるもので,C-1 の -ly は形容詞 + -ly = 副詞 になるもの。そちらの方が多い。
(2) 「毎~の(に)」 daily (毎日(の)), monthly (毎月(の)), yearly (毎年(の))
☆これらは形容詞としても,副詞としても使える。 - -y ・・・ 「~のような」「~の性質の」「いくぶん~の」 rainy (雨降りの),dreamy (夢見るような),wealthy (裕福な),yellowy (黄色がかった)
- -al, -ial, -ical ・・・ 「~の」「~に関する」「~的な」 philosophical (哲学的な),economical (節約になる), cultural (文化的な),industrial (産業の [industry 産業])
- -ic ・・・ 「~の」「~に関する」「~的な」 economic (経済の),atomic (原子の [atom 原子])
☆ 8 の -ical と9 の -ic は同じような意味を持ち,electric = electrical (電気の)のように意味が同じものもあるし,economic と economical のように異なるものもある。 - -ary ・・・ 「~の」「~に関する」 imaginary (想像上の),customary (習慣的な)
☆「~に関する場所」のような名詞になることもある library - -ous ・・・ 「~な」「~の多い」 dangerous (危険な [danger 危険]),courteous (礼儀正しい [courtesy 礼儀正しさ])
☆ -ity, ion の語尾を持つ名詞の派生名詞は,-ious になる。 ambitious (野心的な [ambition 野心]) - -esque ・・・ 「~のような,~ふうの」 picturesque (絵のような),Romanesque (ロマン主義様式の)
(2) 語幹が動詞のもの(動詞 + x = 形容詞)
- -able, -ible, -uble ・・・ 「~されることができる」「~されるべき」「~に適した」「~しやすい」 imaginable (想像できる),reliable (信頼できる,信頼すべき [rely 信頼する]),readable (読みやすい),visible (目に見える),soluble (溶けやすい,解決できる [solve 溶ける,解決する])
☆動詞に -able(ible, uble)がつく時には,その動詞の受身の意味+「できる」になることに注意。The book is readable. (その本は読みやすい)とは言うが,× I am readable the book. などとは言わない。-able型形容詞に,さらに否定の接頭辞 un-, in-(im-)が前につけば「~されることができない」になる。 - -ed ・・・ 「~された」 well-behaved (行儀のいい),learned (教養のある[形容詞の発音は/ləːnid/])
☆もともと過去分詞だったものが形容詞化したもの。 - -ive ・・・ 「~な」「~的な」「~の性質の」「~の傾向のある」 imaginative (想像の,想像力豊かな),effective (効果的な [effect 効果])
- -ant ・・・ 「~性の」「~する」「~を引き起こすような」 pleasant (楽しませる),relevant (関連した),dominant (支配的な)
☆名詞を作る -ant はA-(2)-1。
C. 副詞を作る接尾辞
- -ly ・・・ 「~に」「~的に」 quickly (すばやく [quick すばやい]), generally (一般的に [general 一般的な])
☆おもに,形容詞・分詞につく。名詞につく -ly はふつうは形容詞になる(B-(1)-6)。hard (いっしょうけんめい)― hardly (ほとんどない)のように意味が変化するものもある。また,high(高い,高く)― highly (非常に)のように,-ly がつくと程度の副詞になる場合もある。 - -ward(s) ・・・ 「~の方へ」 forward (前へ),westward (西へ)
☆-wards と s がつくのはイギリス風で,意味は同じ。 - -wise ・・・ 「~のように」「~に関して」 likewise (同様に),clockwise (時計回りに)
☆このwiseはway の意味の古語。だから,~wise で in ~ way (~的なやり方で)の意味になる。
D. 動詞を作る接尾辞
- -ate ・・・ 「~する」「~させる」 create (創造する),separate (分ける)
- -en ・・・ 「~にする」「~になる」 strengthen (強くする),widen (広くする)
☆形容詞につく。接尾辞ではないが,前からつくこともある enlarge (拡大する)。 - -ify, -fy ・・・ 「~にする」「~化する」「~になる」 terrify (恐怖させる terror [恐怖]),simplify (単純化する)
☆名詞・形容詞につく。 - -ize ・・・ 「~にする」「~化する」「~になる」 apologize (わびる [apology おわび]),civilize (文明化する)
☆イギリスつづりは -ise になる(名詞化すると -isation)。なお,surprise や advise はこれとは関係ない。
参考文献
- Quirk, R., S. Greenbaum, G. Leech & J. Svartvik (1985) A Comprehensive Grammar of the English Language, London: Longman
- Huddleston, R., & G. Pullum (2002) The Cambridge Grammar of the English Language, Cambridge: Cambridge U.P.
- 小西 友七, 南出 康世 編 (2001) 「ジーニアス英和大辞典」 大修館書店