ことわざの一種。
Don’t look a gift horse in the mouth.
直訳すると,「贈り物として贈られた馬の口の中をのぞき込むようなマネをしてはいけない」。
馬は歯の長さを見ると年齢がわかる,といいます(歳をとると歯茎が後退するらしい)。馬をプレゼントされて,さっそく口を開けて歯の長さを確かめるような恩知らずなことはしないように,というわけです。Oxford Advanced Learner’s Dictionary (OALD) では, look a gift horse in the mouth という項に, to refuse or criticize something that is given to you for nothing 「ただでもらったものを拒絶したり批判したりすること」とあります。「拒絶する」場合もつかうんですね。
look ~ in the face[eye] という慣用表現があります。「~の顔[目]を見る,~を直視する」という意味です。もちろん look at ~’s face のように言ったっていいわけですが,前の表現の方を使うことが多いでしょう。 catch him by the arm 「彼の腕をつかむ」, hit him on the head 「彼の頭をなぐる」など, V + O + 前置詞 + the 体の一部 という公式で,「腕のところで彼をつかむ」「頭のところで彼をなぐる」という表現法は,日本語では言わないが英語ではよく使われるタイプの表現です。 Don’t look a gift horse in the mouth.ということわざも同じ構造をしています。「口のところで馬を見る」ということになります。
Language Log という言語学者たちのグループ・ブログを読んでいると,このことわざをもじったフレーズに出くわしました。筆者 Geoff Nunberg はGoogle Books(グーグル・ブック検索: 書籍の内容検索)のメタ・データ(書名,作者名,発行年などのデータ)に間違いが多いことを問題にしているのですが,彼のグーグル批判に対して寄せられたコメントについての逆コメントです。
A number of people passed along their own experiences with flaky metadata. Others criticized me on grounds that could be broadly summed up as "Don’t look a gift horse in the server," "It’s better than nothing," "who needs metadata anyway?," …
「当てにならないメタデータに関する自分の経験を述べてくれた人も多い。また,私を批判している人もいるのだが,その理由は大枠で次のようにまとめられるだろう。いわく,"Don’t look a gift horse in the server," とか,「何もないよりいいだろう」とか,「メタデータなんて誰が使うの?」とか,・・・
批判者は,グーグル・ブック検索は革命的なシステムで,それがつまり「贈り物の馬」であり,あんなすごいものの小さな瑕疵をとやかく言うな,と言いたいのでしょう。グーグル・ブック検索の問題はさておき,ここは「馬の歯」だけを見ておきます。
Don’t look a gift horse in the server では「贈り物の馬のサーバーを見るな」となってしまいますから,かなり強引ですが,その強引さが笑えます。
このことわざの初出は,フレーズ検索サイト The Phrase Finder によれば(写真もここからいただきました),1546年のJohn Heywood の A dialogue conteinyng the nomber in effect of all the prouerbes in the Englishe tongue だそうです。
No man ought to looke a geuen hors in the mouth.
looke, geuen, hors, はいずれも look, given, horse の当時のつづりです。