New York Times に, Timothy Egan という人が, "Book Lust" (「読書欲」)というエッセイを書いています。
アメリカの Amazon が最近出した Kindle (携帯用の電子ブックプレーヤー)の感想を聞かれて,Apple 社の Steve Jobs が「その製品の出来がいいか悪いかはどうでもいい。アメリカ人の40%は昨年読んだ本が1冊以下なのだから。」と答えたらしいのですが,記事の筆者 Egan はこの発言に噛みついています。40%うんぬん,というデータの信憑性も否定していますが,結論をはしょって言えば,「読書は死なず」ということです。
3日前くらいの記事ですが,コメントが360くらいついていて,NYTの記事のコメント数としては多い方かもしれません(quality paper だから,汚いコメントはブロックしているはずなので実数はもっと多い?)。コメントはおおむねこの記者に賛成のようです。Jobs ファンも多くて,「Jobs がこんなこと言うなんて」という意見もあれば,「Jobsを支持するが,あなたの意見が現実になることを希望する」なんてのもあります。
最近,日本の大学生の読書についても似たような傾向のデータが発表されました。問題は,知性・教養のあるなしと読書が関係を失いつつあることのようです。わたしのまわりの教師仲間にだって,読書と縁がなさそうな人がけっこういます。Eganも指摘しているとうり,そして日本のデータもそうでしたが,「本を読まない人は増えている。ただし,本を読む人は読んでいる」という傾向が見て取れます。「読書格差」とでもいうべきでしょうか。読書は死に絶えはしないでしょうが,釣りやらゴルフやらと同等の,趣味の一つになっていくのかもしれません。
さて,英語のはなし。
The Mac, Pixar, the iPhone, the iPod, iTunes. This stuff is cool. Lighter than air. iGetit. But it’s just product, dude.
Reading is something else, an engagement of the imagination with life experience. It’s fad-resistant, precisely because human beings are hard-wired for story, and intrinsically curious. Reading is not about product.
まず,前のパラグラフの最後にある,it’s just product, dude. という表現ですが,この It’s ~ , dude. という形はちょくちょく見かけます。グーグルでワイルドカード検索するとぞろぞろ出てきます。dude は「オイお前」というちょっと見下した呼びかけですが,何て訳したらいいんでしょうね。"It’s Not My Fault You Left Hair At Home, Dude"は曲のタイトル。 "It’s the Crude, Dude"は本のタイトル。 Michael Mooreの "Dude, Where’s My Country?" という本は「おい、ブッシュ、世界を返せ!」ですから,「おい」と訳しているわけですね。
もうひとつ,最後の Reading is not about product. 「読書っていうのは製品とは違うんだ」ということでしょうが,about が面白くないですか?これも気になって Google で検索すると,"Bush’s war is not about democracy." とか "Mobile Linux is not about free software." とか "Religion Is Not about God"(本の題名)のようなのが出てきました。 A is not about B. で「AはBと同意ではない。AのポイントはBということではない」のような感じでしょうか。
product が不可算で使われているので,これも気になりましたが,「ジーニアス大英和」は可算のみ,G4, 「ウィズダム」,「ルミナス」はC , U 両方挙げていました。なかでも,「ルミナス」は普通の用法では[C], 商業用語として [U] としていました。「ルミナス」あなどるべからず。