大学入試の英語長文は,その長文の出典・著者を明示しないことが多い。誰が書いたのか,どういうタイトルの本や記事から採ったのかをはっきりさせていないのだ。
むろんこれには,入試問題という「メディア」の特性もあることはある。タイトルを載せてしまったら,「この文章のタイトルとして適当なものは次のうちどれか」なんて問題は作りにくい。要約問題でもヒントになる,あるいはミスリーディングになる場合がある。テキストの出自にまつわる情報を消去して,できるだけテキストそのものを宙づりにした状態で生徒に読ませるということに,全く意味がないわけではない(すごく意味があるわけでもないが)。
だが,状況は変わりつつある。東大・京大のように以前として著者・タイトルを載せない,載せたこともない(と思う)の大学も多いが,ここ数年は徐々に記載する大学が増えてきた。それでもまだ記載大学は3割程度らしいが,増加傾向にあるのは確かなようだ。それも別に大学のテキスト観や著作権意識が変化したというよりは,主に現代文で裁判沙汰にもなった著作権問題が,英語にも波及してきた,要は外圧がかかってきたということのようだ。
最近ある事情があって,長文の出典調査をいくらかまとまった量せざるを得ないはめになった。☓☓大学の☆学部のyyyy年度の問題のn番の著者は誰で,タイトル・出版年・出版社などの情報を調べるというかなりめんどくさい仕事だ。
昔だったら,ほとんどカンでやるしかなかった。全体の内容から判断してこんなことを書くのはきっとOOに違いないとか,本文中の片言隻句をとらえて割り出したり...まあ,こんな作業で出典まで突き止められるのはごくごくわずかにすぎない。たまたま見つけると,結構うれしい。さっそく授業でひけらかしたりする。もちろん誰も評価してくれないけど。
しかし今はネットがある。特に「グーグル・ブック検索」である。
ちまたでは,ストリート・ビューが話題である(だった)が,「グーグル・ブック検索」のパワーたるや半端じゃない。「こんなのアリなのか?」と思ってしまう。
(つづく)