語彙レベル★★☆☆|ストーリー★★★☆|知的興奮度★★★☆|前提知識★★☆☆|対象レベル 英検準1級以上|ジャンル 推理小説|496p.|英語
ご存知,2003年に発表以来世界的なブームとなった「ダビンチ・コード」です。
主人公はハーバード大学の宗教象徴学(religious symbology)の教授である Robert Langdon が,パリでルーブル美術館館長 Jacques Saunière の殺人事件現場に連れてこられるところから始まります。Langdon が探偵役となって,この殺人事件を解明していくというストーリーですが,メインはむしろ謎解きの多くが,ダビンチをはじめ美術の寓意・象徴を読み解き,暗号を解読し,宗教史の謎を解きほどいていくというプロセスにあります。美術史・宗教史・暗号学などの知識が事件の謎を解くカギになるわけです。しかし,前回の 「薔薇の名前」ほどの前提知識が必要になるわけではありません。いちいち説明してくれています。解説本もでていますが,なくても大丈夫でしょう。でも,ダビンチの画集くらいあると便利ですが。
英語的には,そうした美術史・宗教史の用語が多少ネックになるかもしれません。それ以外は語彙レベルはそれほど高くありません。私の勤務する予備校に来ていた都内の某進学校に通う生徒が,学校の英語の補習として "The Da Vinci Code" を読む授業を取ったそうです。数ヶ月後,「そういえば,あの授業どう?」と聞いたら,「むずかしくて,やめちゃった。」という返事でした。その子は結局早稲田に合格しました。つまり,この小説は,進学校の意欲的な先生が高3生に読ませてよいと判断するほどのやさしさであり,早稲田に合格する生徒でも途中で投げ出すくらいの難しさだ,ということになります。受験前だからしかたないですけど。
"It’s quite possible," Langdon said. "Da Vinci was a prankster, and computerized analysis of the Mona Lisa and Da Vinci’s self-portraits confirm some startling points of congruency in their faces. Whatever Da Vinci was up to," Langdon said, "his Mona Lisa is neither male nor female. It carries a subtle message of androgyny. It is a fusing of both."
まあ,本物の(?)推理小説ファンにはやや物足りないかもしれませんね。私は途中で,「こいつが××だろうな」という推測がつきましたが,皆さんはどうでしょう?
(この paperback review のカテゴリーは,英語で読む本を探している方に向けた読書案内です。私が読んだ本の中から選んでコメントしています。)