ここでは,直前対策について考えます。
本来,自由英作文問題は,短い英語なら正確に(妥協すれば,ほぼ正確に)かけることが前提です。この力がまだついていない人は,ふつうの英作文問題で力をつけておきましょう。
それを踏まえた上で,直前期の自由英作文対策を考えていきましょう。
あたりまえのことなのに.......
あたりまえのことなのに,案外見落とされる,または気付かれていないことは,
問題の条件を満たす
ということです。
そんなこと簡単,知ってるよ,バカにするな,と思うかもしれませんが,僕の経験では,おそらく答案を書いた人のうちの少なくとも 40% くらいは条件を満たさず,結果, 0 点となる可能性が高いのです。英語としては完ぺきな答案だったとしても。
条件といわれればふつう,
単語数の指定,「賛成か反対意見を書け」とか「例を挙げて」とか「理由を2つ」とか,「本文中の語句を使ってよいが,文をまるごと引用してはならない」などの指示
などのことを思い浮かべます。もちろん,これらも重要です。「X 語程度」という場合は,その語数の 80% ~ 120% あたりが許容範囲で,大学によって基準は異なりますが,50% 以下なら 0 点,50% ~ 80% なら内容が良くても減点というのがよく言われる採点基準です。
でもここで僕が条件というのは,もっと見つけにくいもので,おもにテーマに関することです。たとえば,次の問題を考えてみましょう。書かなくてもいいですから,ちょっと考えてください。
次の設問について,50語程度の英文を書きなさい。 (青山学院・文学部 2007)
What is the pleasure of reading books as opposed to enjoying films and TV?
さて,何をどう書きますか? as opposed to ~ は「~と対立するものとしての」「~と比較した場合の」という意味ですから,問題文は「テレビ,映画を楽しむことと比較した場合の読書の喜びはなにか?」という意味ですね。
「本とテレビの比較だろ,映像は印象的だが長続きしない。活字は想像力を使わなければいけないが,そのぶん脳が鍛えられ...」なんてことを書こうとしませんでした?この問題では,読書とテレビ・映画との比較を書く,なんてことは求められていません。注意すべきは次の二つです。
- 「テレビ・映画と比較した場合の読書」と書かれているので,メインは読書の方
- 2つのメディアの特徴を比較しろなんて書かれていない。「喜びは何か」と聞かれているのだから,「喜び」「楽しみ」に関連付けなければいけない。
だから,読書の特徴として「想像力が必要」ということを思いついたのなら,それを「喜び」につなげていく論理が必要なのです。たとえば,
「映像の世界は与えられたイメージを受け取るだけでよいので,視聴者は楽ではあるが,すべてを与えられてしまい自由ではない。それに対し,読書は想像力を働かせる努力が必要だが,逆に想像力が人間に自由のよろこびを与えてくれる」
のように,「喜び」またはそれに近い語に結びつけなければならないわけです。
ただし,東大・阪大・一橋のように条件が少ない・または見つけやすい大学もあります。逆に,慶應・経済のように条件が多く・わかりにくい大学もあります。
さらに,あたりまえのこと
書き始める前に,メモをとる
これもあたりまえなのに,メモを取らない人ってけっこう多いですね。僕は,英語だろうが,日本語だろうが,メモを取らなきゃ書けません。
- まず,上に述べた問題の条件を整理した上で,
- 思いついたことをかたっぱしからメモし,
- そのメモどうしで関連しているものをまとめ,
- 大ポイントを2つとか3つ,そのそれぞれの下に小ポイントをいくつかに分け,
- 全体をどういう順番で並べるかを考える
といったかんじです。これを本格的にやると「KJ法」という発想テクニックになるのですが,そこまで徹底しなくてもいいでしょう。
ちょっと一橋大学(2007)で試してみましょう。
Write 120-150 words of English about one of the topics below. Indicate the number of the topic you have chosen. Also, indicate the number of words you have written at the end of the composition.
1. Japan is not a democratic society.
2. Christmas should not be celebrated in Japan.
3. The school year in Japan should start in September.
条件は,120 ~ 150 語で,3つのテーマのうちから一つを選び,その番号を書き,最後に語数を書く,ということだけです。では,1 「日本は民主的社会ではない」でやってみましょう。まず思いつくことをかたっぱしからメモ,です。
- 投票率が低い
- みんな,特に若者は政治に関心がない
- 政治家が腐敗してる
- 少数意見が無視される
- 議論が苦手だ
- 集団主義的だ
まあ,こんな程度でもかまいません。どこかで聞いたようなものばかりで,ぜんぜんオリジナルな意見ではありませんが,入試にオリジナリティなど必要ないでしょう。ここで,「待てよ,問題は democratic nation (民主主義国)じゃなくて,democratic society と言ってたよな」と思いつけばしめたもの。選挙や政治制度も「社会」に関係はありますが,むしろ国民の間に民主主義が浸透していない,社会の中に民主主義的風土が根付いていないということの方に重点を置いた方がいいのでは,と思いませんか。上のポイントで言うと,上から2つめや,下の3つをもっと深めよう,という方針が見えてきます。
- いじめ問題(人と違うことを恐れたり,違う人を排斥する傾向)
- 論理よりも感情に流されがち
とりあえず,これらのネタ(小ポイント)を,大ポイントにまとめていきます。
- 日本人は集団主義的傾向がある
- みんなと同じであることが求められる
- 違う人は排除されがちだ –> (例)いじめ問題
- ∴ 少数意見が無視される
- 論理よりも感情やしがらみを優先する傾向がある
- 理屈を振りかざす人は嫌われる
- 自分の意見を言いたがらない
最後に,全体のテーマとのつながりを考えて,「民主主義が成り立つためには1や2が必要だが」を最初に入れ,結論として,「だから日本はまだ民主的社会ではない」と末尾に置く。
現実には,わからない単語などが出てくるでしょうから,こんなにうまくはいきませんが。
結論を先に言う
今の問題では,テーマ自体が結論として問題文に出ていたので,最後に「だから日本はまだ民主的社会ではない」とつけましたが,一般的には英文では結論を先に言う方がふつうです。日本人の書く文章は,「ああでもない,こうでもない,だから ×× だ」という順序になりがちですが,西洋人の好むスタイルは「 ×× である,なぜなら第一にああであり,第二にこうであるからだ。」という形です。どういう結論にもっていきたいのかがなかなか見えないと,ネイティヴは不安・不満を感じるようです。50語程度の短い文ならともかく,長い文を書くときにはこの西洋風スタイルをお勧めします。
この時,とうぜん重要になってくるのが,論理展開指標( discourse markers ),簡単にいえば,「なぜなら」「それゆえ」「たとえば」「第一に」といったつなぎの言葉です。極論すれば,入試における「論理的な英文」とは,この discourse markers がうまく使えている文章のことだと言っていいでしょう。ぜひ練習を積んでください。
論理展開指標についてはここにリストがあります。
過去に複数の大学で出されたテーマ
典型的テーマを出題する大学では,ある程度テーマを考えておく練習をしておいてください。次のリストは,典型的テーマの数例です。
エッセイ型
- 高校時代にいちばん印象的だった出来事
- 自分がいちばん影響を受けた本・映画
論文型
- 死刑制度は廃止すべきか (青山・国際政経,一橋)
- 成人年齢は18歳に引き下げるべきか[18歳から選挙権を与えるべきか] (早稲田・法,一橋)
- 小学校から英語の授業を導入すべきか[英語も公用語にすべきか] (早稲田・法,一橋)
- 少子化の理由や対策