今回は,リスニングのマテリアルとしてどのレベルにも対応できるインターネット・ラジオ放送のVOA Special English を取り上げます。
VOA — Special English とは
説明しなくてもご存知の方も多いでしょう。
VOA (Voice of America) というラジオ局は,民営が当たり前のアメリカでは珍しい国営の短波放送として半世紀以上前にスタートしました。英語だけでなく,第2次大戦中は日本語やドイツ語で,冷戦期にはロシア語などでも放送されたという事実からわかるとおり,もともと旧共産圏などの仮想敵国に向けた,アメリカン・イデオロギーを宣伝するための放送という位置づけの国策放送局です。そういう政治的背景はありましたが(今だってあるでしょう),内容がゴリゴリの「アメリカ万歳」一辺倒というわけではありません(アメリカ万歳に終始しないことが,アメリカン・イデオロギーの強み[人によってはイヤミ]でもあります)。現在は,ネット・短波放送両方で配信されています。
Special English はそのVOAの中で,語彙や文法をやさしめに押さえた,ゆっくり発音される英語で世界の英語学習者用に向けて放送しているプログラムで,毎日1, 2 本,3 ~ 5 分程度の短い番組と15分程度の番組を配信しています。
→サイト Voice of America : Special English
番組内容は単なる毎日のニュースではなく,テーマ別に分類された情報・ニュース・解説で,
- 経済ニュース (Economics Report)
- 教育 (Education Report)
- 科学 (Science in the News)
- 健康 (Health Report)
- 人物伝 (People in America)
- アメリカ史 (Making of a Nation)
その他,社会・文化などの番組が曜日別に配信されます。テーマが多様(Agriculture Report なんてのもある)なので自分の興味で選べます。トランスクリプト(原稿)もネット上にあります。
英語学習の観点では
使い方を工夫すれば高校生(人によっては中学レベル)から上級者まで全レベルで使える教材になりえます。
この番組が,「ちょっとむずかしいな」と思う人は,トランスクリプトを読むことを中心にすえて,音声はその補助として,読んだ後で何度も聴くという順番で学習すればいいでしょう。
逆に「ずいぶんゆっくりだな」と思う人は,完璧に隅から隅まで理解することを心がけたり,シャドウイングの練習教材として使うことをおすすめします。「遅すぎるよ」という人もけっこうたくさんいそうですが,そういう人がほんとうに完全に理解しているかどうかはちょっと疑問です。このスピードで完全に理解できれば,スピードが上がってもかなり理解できているはずです。「遅すぎ」と感じる人には,理解するということがどういうことなのかを誤解している(理解のハードルが低すぎ)場合が多いように感じています。
シャドウイングだって,このスピードで十分なのでは?わたしはたとえば日本語のNHKのニュースだって,ろくにシャドウイングできませんし。