著者:小山龍介 |出版社:東洋経済新報社|2008年|1500円|一般向け|独断的おすすめ度 ★☆☆☆
副題には「楽しみながら成果が上がるスキルアップのコツ」とあります。ビジネスマン向けのようですが,受験生にも何か使えるネタはあるかなと読んでみた。
使えるところが全くないというわけではないが,なんだかなあ,という本ですね。奥付の筆者の経歴によれば筆者は1975年生まれ,京大→広告代理店→MBA→現・松竹・松竹芸能ほか,ということで若い多才な(そしてリッチでスマートな)エリートビジネスマンという人物像が浮かんでくるのですが,本書から受ける印象もそのイメージから1ミリもはみ出しません。紹介しているツールのたぐいはどれもお金のかかるものばかりだし,特に検証されずにシータ波やクオリア,フォトリーディング(!)などが方法論やその理論的背景として導入されているし,英語ができることは前提になっているし...
- ノイズキャンセリング機能付きヘッドフォンを紹介していて,おもしろそうなので実際買っちゃいました。筆者は4万いくらのやつを薦めていたのですが,手が出るはずもなく1万のものでガマン。ま,こんなところかな。
- 六本木ヒルズ(!)などの有料自習室を紹介していたので調べてみたが,高いの高くないの。
- ハーブティー,アロマ,お経,腹式呼吸...好きですよね,こういう人ってこういうものが。
- 「夜の散歩でリスニング暗記」...昔からやっとります。
- 「長時間眠る」...生まれたときからやっとります。
- 「まず机のそうじから始める」...すみません。やってませんでした。さっそくやります。
まあ,このサイトはできる限り人の悪口を言わない方針なのでフォローしておくと,役に立つところもけっこうあります。「勉強」というものとある程度以上つきあってきた人なら誰でも知っていることが多いですが,でもこれからやろうという人にはいいかもしれません。ただそういう人にとって難しいかな,と思うのは,ここのアドバイスをどう使い,どう使わないかです。アドバイス自体が正しくても,学習対象(科目),学習段階,個性などによって使えるときと使えないときがあるということは,どんな勉強法でも言えることです。「試験ハック」の章に出ている「問題集は答から読む」とか「正解した問題は二度とやらない」「教科書を逆さまに読む」とかは使えない場合も多いので注意です。「問題集は答から読む」というのは,知識系の科目(地歴公民)などで,かつある程度予備知識を持っていて新たに覚えることはそれほど多くないという場合などはたいへん有効でしょうが,それ以外の場合はどうかなあ。
学習法というものは「人が言うことを鵜呑みにしない」というのがいちばんだいじなことで,それがわかっている人にはこの本も大いに使えるでしょう。