= 部分否定 =
部分否定については高校や予備校などで,早ければ中学段階で教わるポイントなので,きっとご存知だと思います。次のようなポイントでした。
all, every, both, always 「全部・すべて・両方・いつも」のような100%を表す語を否定文の中で使うと,「ぜんぜんない,どっちもない,一度もない」のような0%を表すのではなく,「全部・すべて・両方・いつも + わけではない・とは限らない」という意味になる。
言い換えると,100%の否定は0%ではなくて,0% < x < 100% の広い範囲,曖昧な範囲を表している
このへんがいちばんよくある,少しおおざっぱな部分否定の説明です。
- I have not read all the books he mentioned. 彼が触れた本全部を読んだわけではありません。
- What teachers say is not always true. 教師の言うことがいつも正しいとは限らない。
- Not everyone knows the news. みんながそのニュースを知っているわけではない。
もう少しポイントを追加しておきましょう。
● 上記の all, every, both, always 以外に,necessarily(必ず,必然的に), entire (entirely) (全体的な(まったく)), whole (wholly) (全体の(まったく)), completely (完全に), quite (まったく)などの 100%語でも同じことが言えます。
● 0% を表すためには,単にnot をつけるのではなく,別の語を用いる必要があります。none (どれも・・・ない) ↔ all, neither (どちらも・・・ない) ↔ both, never (一度も・・・ない)↔ always などです。
● 確実に部分否定が成り立つためには,通常 not は all, every, both, always よりも前に(つまり左側に)なければならない。not がall, every, both, always よりも後に(つまり右側に)あるときには,全部を否定しているのか,部分否定なのかがあいまいな文になります。
All dogs don’t like it. (すべての犬がそれが好きだとは限らない/すべての犬はそれが嫌いだ)
こういう文は書くときには避けた方が無難だと言うことになります。
もし確実に部分否定にしたければ, Not all dogs like it.
全部否定にしたければ, No dogs like it. にすればだいじょうぶです。
どちらも否定語が最初に出てきて,日本人は苦手にしやすいので注意してください。日本語の「ない」は最後に出てきますからね。
● 部分否定を拡張して考えると,100%語だけでなく強調語全般に適用できます。
not + very 「あまり・・・ない」 ← 「とても・・・というわけではない」
not + much 「あまり・・・ない」 ← 「とても・・・というわけではない」
not + too 「あまり・・・ない」 ← 「~すぎるわけではない」
not + 最上級 「あまり・・・ない」 ← 「いちばん~だというわけではない」
"Not exactly." "Not really." 「(あいまいに)そういうことでもないんだよね」
最後のは「正確にそうだというわけではない」という意味で,会話などで相手の発言に肯定でも否定でもなく答えるときに使ったりします。これらをみても,部分否定は曖昧な言い方であることがわかります。「あいまいな日本人」には,便利な表現です。以前,"Not exactly." を使ったら,ネイティブに「あいまいだなあ」とひんしゅくを買ったことがあります。まあその後で,そうでもなくて何なのかをはっきり言えばいいだけのはなしです。でもあいまいに言いたいんだよね,私たちは。