Here’s looking at you, kid. (Humphrey Bogart)

「君の瞳に乾杯」

今週の Quotation コーナーはネタ切れ。で,こんな誰でも知ってるやつで,場をしのぐことにします。

ご存知,映画 Casablanca の中で,Humphrey Bogart 演じる主人公 Rick が,Ingrid Bergman 演じるヒロイン Ilsa に向かって言うセリフです。”kid” というのは,かつて Rick が Ilsa につけていた愛称。

乾杯の文句としては, Here’s to ~!  「~に乾杯」が,どんな辞書にも出ています。

Here’s to your future!

Here’s to your new job!

Here’s to the bride and bridegroom!

同じ意味で, to なしでも使えるらしいのですが,この「カサブランカ」のセリフ以外では辞書にはto のない用法は出ていません。どなたかご存知ですか?

いずれにせよ,「君を見ることに乾杯」というのが直訳のようですね。「君の瞳に乾杯」は名訳だと思いますが,直訳からすると,「君を見ている僕の瞳に乾杯」という感じになるかな。

「カサブランカ」は1942年のアメリカ映画。舞台は現在のモロッコの都市カサブランカで,当時フランス領でしたが,第二次世界大戦下,フランスはドイツに敗れてヴィシー政権(ドイツの傀儡かいらい政権)が統治しますから,カサブランカにもドイツ軍が駐留し,カサブランカで酒場を経営する Rick の店にもドイツ兵が我が物顔でたむろしているというのが映画の冒頭の舞台設定です。そこにナチに追われている反ナチ・レジスタンスの男とその恋人(そして Rick のモトカノ)のIlsa が現われて....というストーリーでしたね。

この映画は,アメリカ人を対独戦争に動員するための反ナチプロパガンダ・国策映画である,という説が現在では有力なようです。映画の中で,酒場でドイツ兵を尻目に,老いも若きも,さっきまでドイツ兵に媚を売っていたおねえちゃんも目に涙を浮かべて La Marseillaise を合唱するシーンはなかなか感動的でした。

Allons enfants de la Patrie,
Le jour de gloire est arrivé!

行け,祖国の子らよ,栄光の日は来たり!

第二次大戦が終わって9年後の1954年には,モロッコの隣国アルジェリアでフランスからの独立戦争(アルジェリア戦争)が始まります。ほんの10年で,少なくとも北アフリカ(マグレブ)では「ラ・マルセイエーズ」の持つ意味が,解放の歌から抑圧者の歌へと変わってしまいます。

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