「愛の本質は見つめ合うことにはない。いっしょに同じ方向を見ることにある。」 (アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ)
サンテグジュペリ(1900-1944)はフランスの小説家。もともとパイロットであり,パイロットとして第二次大戦中に死亡。「星の王子様」(Le Petit Prince)で有名。
- consist in ~ 「(特徴・本質などが)~にある」
- gaze to look steadily at somebody/something for a long time, either because you are very interested or surprised, or because you are thinking of something else (OALD)
- in ~ direction 「~の方向に(へ)」 to ~ direction ではない。
「見つめ合うのは愛じゃない」と言っているわけではありません。見つめ合うだけでは愛じゃない,と言っているのでしょう(だから,「本質」なんてよけいな訳語を付け加えてしまった)。
でも,愛の甘美さの由縁の多くは見つめあうことから来ているわけで,燦々と降り注ぐ陽光の下,ふたりが目を輝かせて海の彼方を見つめている,そんな文部科学省推薦青春映画のひとコマみたいな愛がホントにあるのかいな,とも思います。
見つめ合うだけの愛はやがて終わる,ということなら言えるかもしれません。そして「見つめ合うだけ」が終わった後,お互いにそっぽを向きながら視線を避け合うというのがよくありがちな成り行きでしょう。だとすれば,「見つめ合うだけ」が終わった後に,「いっしょに同じ方向をみる」のはなかなかたいへんなことで,たいへんだからこそ価値あることなのかもしれません。でも,「いっしょに同じ方向を見てるだけ」を愛と呼ぶのか,という疑問も残りますが。
逆に「視線に憎しみをこめて見つめ合う」というのは,「見つめ合うだけの愛」によく似ています。愛にせよ,憎しみにせよ,「見つめ合う」ことには魔力のようなものがありそうです。よく言われるように,愛の反対語は憎しみではなく,無関心だというのも真実に近いのでしょう。