発音記号をマスターしておくことは,単語を増やす上での前提条件です。
なのですが...
発音記号にもいろいろな種類があって,またアメリカ英語とイギリス英語では発音に違いがあり,さらに同じ種類の記号体系でも約束ごと(この音を発音してもしなくてもいい場合どう表記するかとか)があって,それらが辞書によって違うことがあります。
とはいえ,日本のメジャーな辞書ではそれほど大きな違いはなく,市販の単語集であればそれをさらに簡略化したものを使っているので,そんなにむずかしくはありません。
学習者用の発音記号については,
のページに載せておきましたので,参考にしてください。そろそろこれも改訂版を出したいのですが,その準備も兼ねて,かつ入試から離れて少し考えてみます。
いろいろある発音表記の中で,もっとも「権威のある」ものは国際音声字母(国際音声記号) International Phonetic Alphabet です(略して IPA)。しかしこれは本来,音声学で利用されるものであり,つまり地球上のすべての言語のすべての方言も含め,すべての音を正確に記述するために作られたものです。ということは,標準的な英語(「標準ってなに?」という問題は措いといて)の発音を記すのには必要ない記号がいっぱい入っていることになります。/ θ / という記号は英語で使うから目にしたことがあるでしょう(舌先を歯に軽く当てる『ス』)。発音記号の/ a / と/ ɑ /は違う音,なんてことも英語の音を知る上では知っておかなければなりません。辞書によっては,/ i /と/ ɪ /や/ u /と/ ʊ / を区別するものもあります。さらに英語以外では,/ ɥ /, / ʨ /, / ɰ /, / ɕ / といった記号もIPAにはあるのですが,こうなるとどう発音したらいいのか僕にもわかりません。
IPAでは専門的すぎるという理由でしょうか,ふつうの学習用英和辞典ではいくぶんそれを簡略化したものを載せています。各辞典で微妙に違っているのがふつうなので,凡例なので確認しておく必要があります。ジーニアス第4版なら表の見返し(表紙をめくったところ),ルミナスなら巻末にあります。
「発音なんか教わったこともない」という人はざっくりと勉強しておいた方がいいかもしれません。薄い本でCD付きの「ルミナス英和辞典―つづり字と発音解説」(研究社)あたりがお奨め。少し専門的には「ファンダメンタル音声学」(ひつじ書房)か「英語音声学入門」(大修館)ってところでしょうか。あとの2冊はもちろん受験生には必要ありません。学生・教師・一般向けです。
アメリカで出ているアメリカ人向けの辞書(英英)の多くでは,困ったことにIPAやその簡略バージョンが使われず,その辞書の独自ルールで発音を表記しています。 a という文字でIPAの/ æ /を表すことに決めているわけで,新たに覚えるのがかなりめんどくさいしろものです。辞書同士で似ているものもありますが,違うルールで書いてあるものも多いようです。一覧は,アメリカのWikipedia にあります。
→ Pronunciation respelling for English (Wikipedia-en)
それを元に,メジャーなものだけを pdf にしましたので,参考にしてみてください。これも高校生には不要です。
上のWikipedia のページもそうですが,発音記号をパソコン上で見たり書いたりするために発音記号用のフォントが必要になる場合があります。現在のパソコンの多くはUnicodeを使っているので,あまり意識しなくても発音記号を表記できるかもしれません(環境と設定しだい)。
- ワープロで使うなら,フォントは"Century"や"Arial"(Windowsのばあい)ではなく,"Arial Unicode MS"などのUnicodeフォントを使う。ATOKなどの「文字パレット」でフォントを指定してから,「IPA拡張」のドロップダウンを選択して文字を探す。
- IPA用(かな・漢字・ハングル以外のおもに西洋文字)にはさらに,"Doulos SIL " "Chrysanthi Unicode "などのフォントをダウンロードする(無料)という手もある
- ホームページを作るなら,CSSでフォント指定をする。ちなみにWikipediaでは,"IPA"というクラスのCSSは,
/* Support for Template:IPA, Template:Unicode and Template:Polytonic. The inherit declaration resets the font for all browsers except MSIE6. The empty comment must remain. */
.IPA { font-family: 'Chrysanthi Unicode', 'Doulos SIL', 'Gentium', 'GentiumAlt', 'Code2000', 'TITUS Cyberbit Basic', 'DejaVu Sans', 'Bitstream Vera Sans', 'Bitstream Cyberbit', 'Arial Unicode MS', 'Lucida Sans Unicode', 'Hiragino Kaku Gothic Pro', 'Matrix Unicode', sans-serif; } .Unicode { font-family: 'TITUS Cyberbit Basic', 'Code2000', 'Doulos SIL', 'Chrysanthi Unicode', 'Bitstream Cyberbit', 'Bitstream CyberBase', 'Bitstream Vera', 'Thryomanes', 'Gentium', 'GentiumAlt', 'Visual Geez Unicode', 'Lucida Grande', 'Arial Unicode MS', 'Microsoft Sans Serif', 'Lucida Sans Unicode', sans-serif; }となっている。