語彙レベル★★☆☆|ストーリー★★★☆|知的興奮度★★☆☆|前提知識☆☆☆☆|対象レベル 英検準1級以上|ジャンル 冒険小説|384p.|英語
ハンニバル・レクターのシリーズ第一作(?)にして,トマス・ハリスを知らしめた「羊たちの沈黙」。ジョディ・フォスター主演で映画化もされていますし,「別冊宝島」によれば過去20年の「このミステリーがすごい!」ベストの中から選んだ「ベスト・オブ・ベスト」の第2位(第1位は「薔薇の名前」)にもなっていますからご存知の方が多いでしょう。
でも,ごめんなさい。この本を読んだのはかなり前のことなので,だいぶいろんなことを忘れています。映画も(テレビだか,ビデオだかで)見ているので筋は覚えていますが。それ以外で覚えているのは,ストーリーは面白かったこと,でも英語としては「結構読みにくいなあ」という印象だったこと,「また猟奇殺人と幼少期のトラウマが出てくるわけね」と思ったことぐらいかな。プロファイリングという言葉が使われだしたのもこの頃のことでした。
英語として読みにくいというのは,語彙や構文の問題ではありません。専門用語が頻出するわけでもなく,文章が込み入っているわけでもありません。むしろ,表現が口語的でいわゆる「生きた英語」であったことが理由だったと思います。「生きた」というのは,パターンどうりではないということですから,時に「くずれた」「ごちゃごちゃした」にもなりえます。この辺の印象はその人の学習経験によってかなり違ってくるようです。
余談になりますが,以前ジョン・グリシャム(John Grisham)の「ペリカン文書」(“The Pelican Brief”)の読後感を同僚の教師と話したときに,「あれは読みやすいね。Agatha Christie の方がよっぽど難しい」と言われてびっくりしました。私の印象は全く逆だったからです。Christie のどの作品のことをイメージしているのかは不明ですが,私のような,読むことを中心に英語と付き合ってきた者にとっては行儀のよい Christie の英語はむしろ読みやすいように思います。アメリカ英語とイギリス英語の違いのせいでは,と思われるかもしれませんが,その同僚はイギリス留学経験のある人ですから,問題はそこではないでしょう。
さて,次はそんなに読みにくくはない部分です。主人公である FBI 訓練生である Clarice が獄中の Hannibal Lecter とはじめて対面するところ。Lecter が Sherlock Holmes のような観察眼を見せる場面です。
“You use Evyan skin cream, and sometimes you wear L’Air du Temps, but not today. Today you are determinedly unperfumed. (…)”
“(…) How did you know about the perfume?”
“A puff from your bag when you got out your card. Your bag is lovely.”
“Thank you.”
“You bought your best bag, didn’t you?”
“Yes.” It was true. She had saved for the classic casual handbag, and it was the best item she owned.
カットしたところは four-letter word があるところ。こういうのを載せるとコメントスパムが大量に来るというはなしなので。香水を「つける」のも wear と表現するのはおもしろいですね。レール・デュ・タン。そういえば,昔つき合ってた女性がおんなじ香水だったなあ。