「大学は入りやすくなった」と言われます。私もこれは否定しません。以前なら,これではちょっとこの大学は無理だろうな,という実力の生徒でもけっこう「難関校」に受かったりします。
しかし,もちろんこれは統計上の話であって,個々の生徒を見れば成功も失敗もあります。全体的に入りやすくなれば,当然生徒の志望ランクも上がります。志望ランクが上がればやはり失敗例も増えます。第二志望くらいなら入りやすくなったが,第一志望の入りにくさは昔と変わらない,というあたりが実情ではないでしょうか。
塾,予備校,通信講座,そして高校,どこも成功例を声高に喧伝はしますが,失敗例には口をつぐみます。当然のことですけどね。私の感覚にすぎませんが,どこの学校・予備校でも成功例1に対して,失敗例2ならばいい方ではないかと思います。もちろん何を成功と呼び,何を失敗と呼ぶかは,本人の思い(「日東駒専に受かったんだから十分うれしい」とか「早稲田しか受からなくて悔しい」とか)や教師の思惑(「あいつがここに受かったの(ここしか受からなかったの)」)が絡んで,微妙なわけですが。
この時期は毎年,成功例よりも,失敗例の方が身にこたえる季節です。教師の心構えとしては,「受かれば生徒の実力,落ちれば教師の実力のなさ」と銘じるしかありませんが,その失敗が「実は失敗ではなかった」と思える日が来ることを念じてやみません。