「ジーニアス」「ルミナス」「ウィズダム」「ロングマン」の4英和辞典の比較。
文法系(正確には文法ではないが)の記述のつづきです。今回は come と go の使い分けがどう書かれているかをチェックします。
よく知られていることだと思いますが,英語の come が日本語の「行く」にあたる場合があります。
自分が今話している相手のところへ「行く」場合には, come を用いる,ということです。たとえば,人に呼ばれた場合,「今行きます」は, I’m coming. と言い,I’m going. とは言いません。知っている人には当たり前のことなのですが,実際に使う時には案外間違えやすいポイントです。
これを各辞典の記述の中に探してみます。
ジーニアス
come (1)(a) <人・動物・車などが>(話し手の方へ)(やって)来る; (聞き手の方へ)行く
この項目に関しては,「ジーニアス」は本文中のこの部分だけで,特に囲み記事などはありません。come の意味の一番めにふつうの「来る」と並べて書いてあるだけで,特に注意すべきポイントだとは考えていないようです。「来る」「行く」の例文として,9個程度の例文が並んでいますが,そのうちcome = 「行く」の例文としては
- “C~ downstairs. Dinner’s ready.” “I’m coming.” 「下へ降りておいで,夕食ですよ」「今行きます」《この場合 ×I’m going. とは言わない》
- I’ll ~ to the party. バーティに出席します 《聞き手の主催するまたは出席予定のパーティーについて言う発話で,go では関係のない相手に述べていることになる》
- I’m coming to Kobe next week. 《手紙で神戸の友人に書く時の表現》
などの例が挙げられています。
結局,「ジーニアス」は「来る」の come と「行く」の come を統一的に説明したいのでしょう。しかし,そのわりには統一的な説明になるような共通項についての記述がありません。
ルミナス
come 2 (相手の方へ)行く,伺う,参上する: I’m coming[Coming]. 今行きます《呼ばれた時の返事》 / I’ll ~ tomorrow afternoon. 明日の午後伺います。 / I came to your office yesterday, but you went out. 昨日おたくの事務所に伺ったのですが,ご不在でした / [会話] “Why don’t you ~ with us?” “Oh, I’d love to (~).” 「いっしょに行きませんか」「ええ,喜んで(行きます)」 / May I ~ to the party? パーティーに伺ってもよろしいですか。
[語法] come と go の違い
go が話し手を中心に考えて「自分が・・・の方へ行く」という意味であるのに対して,この用法の come は中心を相手に置き — 相手に対して親しみや敬意を持っているときが多い — 「自分が相手の方へ行く」という意味を表す。従って come が日本語の「行く」に相当することもある。
「ルミナス」は「来る」の come と「行く」の come を別項目として扱っています。そして「行く」の come については絵入りの囲み記事(上の絵は私が書いたもので,現物はもっとまともな絵です)で丁寧に説明しています。学習用にはこれが一番わかりやすいと思いますが,どうでしょうか。
ウィズダム
[語法] (1) come と go の視点 come は発話の時点または発話の中で話題になっている時点において,話し手・聞き手や話題になっている場所に近づいていくことを表し,必ずしも日本語の「来る」と一致しない。 go が話し手や聞き手の視点から離れていることを表すため,否定的な態度や疎外感を暗示することが多いのに対し,come は逆に話し手・聞き手の視点に近づいていくことを表すため肯定的な態度や親近感を暗示することが多い。これらの特性はcome を使った多くの句動詞でも受け継がれる。
come 【話し手・聞き手・その場に近づく】 1 a [場所など]《話し手・話題の場所の方に》来る,《聞き手の方に》行く
come = 「行く」の例文が以下に続きます。
- “Susan, are you ready?” “I’m coming [× going].” 「スーザン,用意はいいかい」「今行くわ」(聞き手の方に近づくので go は用いない)
- “I’m going to Ginger’s house tonight. Would you like to come with me?” 今晩ジンジャーの家に行くのだけれど,一緒に行くかい(前半はジンジャーの家に行く移動自体に触れているので go を使うが,後半は話し手の移動に聞き手が加わることについて述べているので come を用いる)
基本的には「ジーニアス」と同様に,「来る」の come と「行く」の come に対して統一的な説明を与えようと試みていますが,「ジーニアス」に欠けていた共通項の説明を語義の前,冒頭に持ってきています。こういう説明はどうしても抽象的にならざるを得ませんが,評価はできます。
ロングマン
come 1 (話し手の方へ)来る,やって来る,(相手の方へ)行く
囲み記事も解説なし,例文は I’m coming. だけ。う~ん。
タグ: 英和辞典